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サークル閉鎖。
by 鯨
天才の秘密

天才の秘密

M. フィッツジェラルド / 世界思想社


 天才とは、たゆみない努力によって開花させた才能ではなく、先天的な異常によって否応も無くこじあけられた天賦の能力のことだ。この本はモーツァルト、ベートーヴェン、ゴッホ、アンデルセン、ルイス・キャロル、コナン・ドイル、ジョージ・オーウェル、スピノザ、カントなど錚々たる芸術家、音楽家、哲学者を列挙し、ギルバーグによるアスペルガー症候群の6つの特徴(1社会的な障害、2狭い興味関心、3決まった手順の繰り返し、4話し方と言語の問題、5非言語的コミュニケーションの問題、6運動機能のぎこちなさ)によって、彼らをアスペルガー症候群だと診断している。故人を診断するとは、横暴であるが愉快である。
 ストーによれば「芸術家や哲学者は本質的に独力で成長することができる。彼らの人生の道程は性質の転換と作品の完成度を高めることから成るのであり、他者との関係から成るのではない」とある。これはアスペルガー症候群の特徴と合致している。「人と人との繋がりのなかで人間は成長する」と考えている人は多い。学校に子供を行かせたがる人がそうだ。たいていは正解である。しかし稀に、学校がその子供の心を打ち砕いてしまうだけで、成長を妨げられてしまう種類の子供がいる。たとえばアスペルガー症候群の子供、発達障害を抱えた子供などがそうである。それでも「人と人との繋がり」を重視する人間は社会の中で「人間ととはこういうものだ」ということを無理に学ばせようとする。無駄である。その子供に挫折感を嘗めさせるだけだ。放っておけ、本でも読ませておけ、好きに映画に行かせろ、音楽を聴きたいだけ聴かせろ。絵筆と顔料くらい買ってやれ。不登校万歳。そういう子供は学校の教科など受けずとも、自分の好きなことを大学のレベル以上まで独学で勉強できる。彼らは学校を必要としないのだ。自分と同じに考えるな。「人間はみんな違う」の「違う」のレベルからして違うんだ。
 天才の存在を認めるべきである。学校と対極にいる彼らを愛するべきである。
by suikageiju | 2009-10-26 10:57 | 感想
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