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サークル閉鎖。
by 鯨
雨の日、テトラポッドで
『雨の日、テトラポッドで』、霜月みつか1103号室
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 異性愛者とか同性愛者とか少女性愛者という言葉は後付けの意味しか持たないと考えている。そういうふうにカテゴライズされているからとそれに見合った性愛行動をとるのではなく、たまたま好きになった人が小学生だったり、偶然にも同性だったりすることで、そう呼ばれるような、相対的な呼称にすぎないのだと。
 大学時代にS藤という男がいた。どこかの温泉街に住む画家の息子で、気取ったハンチング帽をかぶったお洒落な男だった。S藤に比べればミジンコみたいな鯨はS藤とつるんで詩作集団をつくり、講義から講義へと流れながら教室の机にペンで詩を書き残していくという文学的テロ活動を行っていた。ある日、一緒にキャンパスから高田馬場駅まで歩いているとき、S藤はマウスの実験の話をした。
「ケースでオスとメスのマウスを飼っているとする。人口密度が低いうちはみんな異性愛なんだけれど、世代を重ねて個体数が増えて人口密度が高くなって過密状態になると同性愛に耽るマウスや未成熟な幼女マウスを犯すマウスが出てくるんだって。密度が高くなればなるほどそれに比例して同性愛マウスや少女性愛マウスは増えるらしい。これって面白いよね」

 その話にソースがあるのかは知らない。けれどそれ以降、同性愛者は人口過密化を抑制する、生物としての本能によって形成された性癖であると鯨は考えている。自己調節できない異性愛者に代わり、同性愛者が人類の個体数の均衡をある程度保っているのだ。

 誰かは忘れたけれど東京流通センターの会場で「A-10におしゃれにがんばっている女の子がいる。そこに行って、お誕生日おめでとうございますって言ってみな」と言われ、莫迦正直に行ってみることにした。ブースにはやたらとシャイな女の子が座っていて「お誕生日おめでとうございます」と鯨が言うと小さな声で「ありがとうございます」と返してきた。なんかいたたまれなくなって、その子が適当に見繕ってくれた本数冊を吟味せずに「買う」と言い、お金を払ってブースを後にした。後日、その女の子が21世紀日本文学界期待の新星、ジャンクフード・クラッシャーこと「霜月みつか」だと知った。
 さて本作は第三版であるという。結局この雨ポッドを三回読んだけれど、今回は以前の版とはまったく違う内容になっていた。どう違うかは実際に買ってみて読めばいい。これはBLなのかなと思うけれど、すぐに違うと鯨は否定する。小説としての焦点は時雨にも岬にもない。焦点は佐々木由香にあり、岬の母であり、時雨の同僚でもある。最後に言っておこう、これは同性愛の小説ではない。これは「全身の皮膚を剥がれたアイドルの握手会」小説である。
by suikageiju | 2011-11-13 16:04 | 感想
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