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サークル閉鎖。
by 鯨
おかえりください

おかえりください

日野 裕太郎 / doncha.net


 こっくりさん、狐狗狸さんとも書く遊びを鯨はやったことがない。その遊びに鯨を誘ってくれるような友人なんていなかったからだ。これを読んでやらなくて本当によかったと思う。あと捻締錠というものがよくわからなかったのだけれどGoogle画像検索をしたら理解できた。どこかでそんな錠を見たこと、触ったことがあるかもしれない。
 「表紙に騙された」と鯨が書いても誰にも非難されないはずだ。本当に恐い怪談話。怪談話は小学生のころに流行っていて何冊か読んだけれど霊よりも生きている人間の方が恐ろしいということを知ってからは余り読まなくなった。たぶん夜トイレに行けなくなってしまったのでこの本を読むんじゃなかったと今後悔している。怪談話が文学として認知されていく過程で「幽霊」に建前を排除した人間の本音みたいなものを投影していっているような気がしていて、そして死んでから本音を吐いたってしょうがないじゃない、幽霊になって恨み言を述べるくらいなら生きているときに本音を言ってよ、と訴えかけていると思っていた。全部嘘である。怪談話は単に読む人を怖がらせて反応を楽しんでいるだけだ。くすぐらせてくすぐったくて笑っているのを楽しむのと、いじめて顔が歪むのを楽しむのと、つっこんでよがるのを楽しむのと、そうは変わらない。でも著者が本当に意地の悪い人間ならばさらに最後にもうひと捻りしたはずだ。そうせずにそのまま終わらせたのは著者の優しさでもあるし、この作品を人間劇として締めくくろうとした決意を表わしていると鯨は受取った。
by suikageiju | 2013-02-23 20:03 | 感想
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