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サークル閉鎖。
by 鯨
スーパー・ファッキン・ドライ
 11月にも一回読んで、その時は「勢いがある」とつぶやいて本を閉じた。山田宗太朗さんによるこの本には「そんな目で見ないでくれ」と表題作「スーパー・ファッキン・ドライ」が収録されている。
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 2度目に読んで、地の文での語りがあまり上手くないのは、きっと精神的に不安定な主人公の一人称で綴られているので、敢えて崩しているのだと推測した。これは微妙な選択で、作品の雰囲気を作るために下手に書くという手法とそれでも読み応えがあるように書くという手法のどちらが正しいかは一概に決めつけられない。ただ、下手に書いても文章を書くことに巧みな人は言葉の選び方で滲み出る味があるもので、そういったものをいささかも感じられない本著はもしかしたら推測が外れて単に書き慣れない作者による若書きなのではという怖れもある。あるいは完全に読み手が欺かれたか。疑心暗鬼な一冊である。

「そんな目で見ないでくれ」
 この掌篇の主題ととらえられる男の焦燥感や執着の表現が、やや唐突でそして乾いた性描写によって薄められて、ぼやけた感じになり、そしてそのまま唐突に終わっている。独特な疾走感のある文体で読み手は置いてけぼりをくらった。
「スーパー・ファッキン・ドライ」
 シンクにビールを垂れ流す盛り上がり場面のすっぽ抜け感に戸惑いを隠せない。小学生である子とその親である麻酔科医との、テストの点数を媒介にした言葉のかけあいが面白い。

 全体を通して感じられたのが「言葉への信頼が弱い」ということ。言葉への不信感が肉としての言葉を盛ってしまう。これを小説に変えるには無駄な言葉を削り、スト―リー或いは場面を増やす必要がある。そして他人の心に土足で入り、何よりも嘘を鍛えること。
by suikageiju | 2014-01-09 00:39 | 感想
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