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ジョアン・フォンクベルタの視覚による悪ふざけ
 さて、今日の勝手にフランス語を訳す企画はLe Mondeの新聞記事、ヨーロッパ写真館で開催されていたジョン・フォンクベルタのカモフラージュ展についての記事の無料で読める部分だけだ。

展示会を訪問して笑い声が鳴り響くのはそうありふれたことではない。ヨーロッパ写真館での、部屋から部屋へと虚構の悪ふざけをぶらつく、抜け目なく笑いをとるスペイン人、ジョン・フォンクベルタの展示会では笑い声にしかめっ面を見せるなんてとんでもないことだ。

地下階にある美術館の丸天井では絶滅種を発見した学者の研究が展示されている。その文書、新聞記事、科学的写真は足取りの真剣さを証明している。ケンタウロス、ユニコーン、グリフォンなどとの強い類似が示されている問題のある動物を除いて、全て。

 ちょっと文の構造が複雑だった。

原文
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by suikageiju | 2014-04-29 08:29 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
ヤシャル・ケマルがゲジ公園について書いた
Yaşar Kemal, Gezi Parkı üzerine yazdıEdebiyat Haber(トルコ語、文学情報サイト)からの意訳

ヤシャル・ケマルはLa Repubblica紙に、ゲジ公園ではじまったことと全トルコに広まった反抗について書いた。
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「いつも私が声に出して支持しているように世界はひとつの文化庭園である。そこで数千もの花が育ち、全ての花にそれぞれの色と香りがある。私たちの世界はこの千種類もの花々であって、とても美しい。文化はこれらの花ととともに更に美しくなる。しかし一つも花が無いのだとすると、その時には色も香りも世界で果ててしまう。

文化の消滅と同時に、私たちの人間性もまた消滅するのだ。しかし知られる必要がある、そのときに社会の健全さ、能力と正義といったものの耐久力が明らかになるのだと。もし弾圧に遭ったとしたら、そのときは(私たちは)同情心を失い、弱体化して創造性を失うだろう。

人種差別も重篤な病である。財産を失うと憎悪の種子が人々の心の中で育まれ人種差別が生まれる。

そして表現の自由と民主主義に対してつくられた憎悪は、私たちの世代の悲惨な事件のために、大きな役割を演じていて決して許容できない。今日私たちに必要なのは民主主義体制であり、常に非人間的な圧迫とともにあってはならない。

ほんとうの民主主義の秩序を据える必要がある。なぜなら民主主義は必要なものだからで、それが均衡のための要素だからだ。体制もすべての人自身の名誉のもので、そして主要な基本的人権を保護しなければならない。私たちの自尊心、私たちのパンと豊かな私たちの文化を取り戻すことが私たちには急務だ。みな団結し、調和のとれた民主主義のために手と手をとりあって私たちの心、私たちの知性を高めていこう。」

2013年6月5日
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by suikageiju | 2013-09-03 21:31 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
死ぬまで私はノーベル賞候補者のままだろう
Hürriyet紙2006年12月15日からの意訳

作家ヤシャル・ケマル(Yaşar Kemal)は自身がノーベル文学賞候補者になった「最初のトルコ人」であることを明らかにし「1973年からノーベル賞候補者となった。死ぬまで候補者のままだろう」と言った。講演の最後の方で自身に向けて「何のために書くのか」と問いかけ声に出したヤシャル・ケマル、「長年にわたり書かないよう努めた、しかしできなかった。まだ書いている」と話した。
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ヤシャル・ケマルはカドゥキョイ地区のジャッデボスタン文化センターで企画された本祭りの開会式に妻のアイシェ・ババンとともに「名誉賓客」として参加した。
ヤシャル・ケマルは、本や本の著者は以前はもっと興味を示されていたと注意を引き「くだらない社会でわれわれは生きている、そんななか、この社会にいる作家たちの一人として本当に残念に思っている。私は四十冊の本を書いた、四十冊がこの国に何をもたらしたのかはとてもじゃないが分からない」と話した。

ムスタファ・ケマルはそのままだ
ヤシャル・ケマルは講演が終了した後で、聴衆のうちから3人だけに自身への質問の許可を与えた。
「オルハン・パムクが獲得したノーベル文学賞は政治的なものですか、違いますか」と質問されたヤシャル・ケマルは笑いながら「この質問は私にしちゃだめだよ。私はノーベル文学賞候補になった『最初のトルコ人』だ。1973年からずっと候補者で、死ぬまで候補者のままだろう。彼のためにも私にはその質問をしてはならない」と言った。
ヤシャル・ケマルは「政治的反動は私たちを降伏させるだろうか?」といった形式の質問に「私はそう考えていない。何をしてきてもムスタファ・ケマルはそのままだ。最後までそのままだ」というふうに返事をした。
ヤシャル・ケマルが「私は嘘は言わないよ」と口を開いてから出た言葉は次のように進んだ。「もう一度、社会に出るならトラクター運転手になったろうね。なぜなら私は若い頃にトラクター運転手をやっていて人生でもっとも幸福な時代はその頃だったからだ」
シュメール学者のMuazzez İlmiye Çığも参加した開会式でカドゥキョイ地区長Selami Öztürkはヤシャル・ケマルに金属の盾を贈った。
Öztürk地区長は盾を授与する際に「結婚式も私は惜しまないだろう」と言ってヤシャル・ケマルの妻アイシェ・ババンを来客たちに紹介した。ジャッデボスタン文化センターは12月17日まで続く本祭りでいろいろな種類の随筆やパネルや署名を用意する。
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by suikageiju | 2013-09-01 22:53 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
サンフランシスコの天気
 曇り空の午後、イタリア人の肉屋がとても年老いた婦人に肉1听を売る。でもそんな年とった婦人が肉1听をいったい何に使うんだろうね。
 彼女はそんな大量の肉には見合わないお年寄りだった。たぶん彼女はその肉を蜂の巣箱へやるのだろう。500匹もの蜂が家で肉を待っていて、その蜂たちの体はきっと蜂蜜でべとべとだ。
「今日はどの肉にしますか」と肉屋は訊いた。
「いい挽肉があるんすよ。赤身の肉でね」
「知らないね」と彼女は言う。「挽肉はいらないね」
「ああ、赤身ですよ。俺が挽いたんだ。赤身をいっぱい使ってる」
「挽肉はよろしくないねえ」と彼女は言う。
「ああ」と肉屋は言う。「今日は挽肉にもってこいの日だよ。外を見てみな。曇ってる。雲の中には雨を含んでいる奴もいるだろうな。俺だったら挽肉だね」と彼は言う。
「いいや」と彼女は言った。「挽肉はいらないね。それに雨は降らないんじゃないかな。すぐにお日様が出てきて、晴れ渡るだろうね。だから肝臓を1听頂戴な」
肉屋は鼻白んだ。彼は老婆に肝臓なんて売りたくないんだ。老婆に肝臓を売るってことは何だか彼をしょげさせる。彼はもう彼女に何も言いたくなくなった。
 彼は嫌々ながらも、大きな赤い肉の塊から1听の肝臓を切り分けて、それを白い紙で包み、茶色の袋にいれた。それは不快な経験なんだ。
 彼はお金を受け取って、老婆にお釣りを返すと、家禽肉の棚に戻って、しょげた心を和らげる。
 船の帆のような骨を張って、老婆は通りに出た。彼女は勾配の急な丘のふもとまで、勝ち誇ったように肝臓を運んだよ。
 彼女は丘を登ったんだけれど、とても老いていたから、けっこうきつかった。疲れるから頂きにたどり着くまでに何度も小休止をとったよ。
 丘の頂きには老婆の家がある。曇り空を映す張り出し窓のある、のっぽなサンフランシスコ風の家だ。
 彼女は小さな秋の野原のような鞄をあけて、老いた林檎樹の落ち小枝のそばに家の鍵を見つける。
 彼女は扉をあけた。扉は愛しくて信頼できる友達だ。彼女は扉に会釈すると家に入り、長い廊下を抜けて、蜂の飛び交う部屋に入った。
 部屋のいたるところに蜂がいた。椅子の上に蜂。彼女の死んだ両親の写真の上に蜂。カーテンの上に蜂。1930年代の曲を流していた古ぼけたラヂオの上に蜂。櫛と刷毛の上に蜂。
 蜂たちは彼女のところに飛んできて、彼女のまわりを愛情たっぷりに飛びまわる。彼女は肝臓を取り出すとそれを曇った銀皿の上におく。すぐに皿の上は晴れ渡った。


The Weather in San Francisco, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-19 16:51 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
美しいオフィス
 最初にそこを通ったとき、それはデスクとタイプライターとファイル棚と鳴り響く電話のある普通のオフィスだった。6人のOLがそこにはいて、アメリカ中にいる他の幾百万のOLたちと見分けがつかなかったし、誰一人としてかわいくなかった。
 オフィスにいる男はみんな中年で彼らは、若い頃にかっこよかったり、青年時代に何か活発だったりというような様子を見せなかった。名前を覚えられないくらい彼らはよく似ていた。
 彼らはオフィスでしなくちゃいけないことをしていた。窓にも扉にもそのオフィスが何のオフィスなのかを説明するものはなかったし、そこの人が何をしているのか僕は知らなかった。たぶん別の土地にある大企業の支店だったのだろう。
 その人たちは自分が何をすべきかを知っていたから、僕は仕事の往復で一日2回その前を通過しながら、そのままにしておいた。
 1年くらいたってもそのオフィスはそのままだった。人は変わらなかったし、決まった量の仕事をしていた。それは宇宙の中にあるほんのちっぽけな空間にすぎなかった。
 ある日、道中にそのオフィスの前を通過すると、そこで働いていた平凡なOLはすべていなくなっていた、消滅した、まるで空気そのものが彼女たちに新しい職を与えたかのように。
 オフィスには彼女達の痕跡さえなく、彼女たちの後釜にはとってもかわいい6人のOLがいた。ブロンドちゃんやブルネットちゃんとかいろいろで、いろんなかわいい顔といい体をしていて、魅力的な女らしさがあって、体にぴったり合ったスーツを着ていた。
 親しみのある大きなおっぱいに気持ちのいい小さなおっぱい、そして誘惑されてしまうお尻たち。そのオフィスのなかで僕が見た全ての場所に、女の形で現れた心地よいものがあった。
 何があったんだ?他の女性はどこに行ったんだ?この女性たちはどこから来たんだ?彼女たちはサンフランシスコにまだ慣れていなさそうだ。これは誰のアイデアなんだ?これはフランケンシュタインの究極の意図なのか?ああ、僕たちは誤解していたんだ。
 1年たって、週5日そこの前を通り過ぎて夢中で窓の中を見て、これらのかわいらしい肉体がそこでしていることを何でも理解しようとした。
 僕は思う。誰が社長か、どの男が社長か、は知らないが、社長の妻が死んでこれは長年の単調さへの復讐なのだ、これでとんとんなのだ。あるいは夕刻にテレビを観るのに飽きただけだ。
 長いブロンドの女の子が電話に答えている。かわいいブルネットちゃんが何かをファイル棚にしまった。完璧な歯並びをしたチアリーダーっぽい娘は何かを消している。ちっちゃいけれどおっぱいの大きなミステリアスな女の子はタイプライターに紙を巻いている。完璧な口をして大きなお尻を持つ背の高い女の子は封筒に切手を捺している。
 美しいオフィス。


The Pretty Office, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-18 19:57 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
35ミリフィルム無限供給
 どうして彼が彼女と一緒にいるのか、他の人にはわからない。彼らには理解できないよ。彼はかっこ良くて、彼女は不細工だ。「彼は彼女の中に何を見ているんだ?」彼らは自身に尋ね、お互いに訊き合う。彼らはそれが料理ではないことを知っている、というのは彼女は料理が下手だからだ。彼女ができるたった一つの料理と云えば中途半端な出来のミートローフ。彼女はそれを毎週火曜日の晩に作るから、彼の水曜日のお昼はいつもミートローフのサンドウィッチだ。彼らは友だちが離婚しても一緒にいる。
 答えへの足がかりは、よくありがちなことだが、2人が愛を交わすベッドの上にある。彼女が映画館になって、彼はそこでポルノ映画を観るんだ。彼女の肉体は生きている映画館にある座席のやわらかなる並びで、それは彼が姦りたい女どもと一瞬の水銀映画のように交わるために用意された想像力の生温かいスクリーンである膣へと導く。だけど彼女はそんなことは知らない。
 彼女が知っていることは彼をとっても愛していることと彼がいつも悦ばせてくれていい気持ちにさせることだけ。彼の仕事が5時あがりなので、4時になると彼女は興奮してくるんだ。
 彼は彼女の内側で何百もの違う女どもと交わってきた。彼に触れ、彼のことを考えるだけの満足した映画館のようにそこに横たわって、彼女は彼の夢をかなえてくれる。
 「彼は彼女の中に何を見ているんだ?」人々は自身に尋ね、お互いに訊き合う。彼らは知るべきだよ。答えはとっても簡単。すべては彼の頭の中にある。


The Unlimited Supply of 35 Millimeter Film, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-18 19:51 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
複雑な銀行問題
 僕が銀行口座を持っているのは裏庭にお金を埋めるのに疲れたのとある事が起こったから。数年前、お金を埋めていたら、僕は人間の骸骨を掘り当ててしまったんだ。
 その骸骨は片手にショベルの残骸を持っていて、もう片方の手には半分融けた珈琲缶を持っていた。珈琲缶にはかつてお金だったと思われる錆粉のようなものでいっぱいだった。だから僕は銀行口座を作ったんだ。
 けれどどっちも時間がかからないわけじゃない。列に並んでいるといつも複雑な銀行問題を抱えた人々が僕の前にはいる。僕はそこに立って、経済漫画のようなアメリカの十字架刑に耐えなくちゃならない。
 たとえばこんなふうに。僕の前に3人いる。僕は現金に替える小額小切手を持っている。僕の手続きはたった1分で済む。この小切手はもう裏書されているし、手に持っているし、出納係の方を向いている。
 今、窓口にいるのは50歳の婦人だ。暑いのに長くて黒い外套を羽織っている。彼女は着心地がよさそうにしていて、彼女のほうからひどい臭いが漂っている。僕はたちまちにしてこれが複雑な銀行問題の最初の兆候だとわかった。
 それで彼女は外套のあげに手を伸ばし、冷蔵庫の影をとりだす、その冷蔵庫は酸っぱくなった牛乳や年代ものの人参でいっぱいだ。彼女はそれの影を普通口座に預けたいのだ。もう書類は書いてある。
 僕は銀行の天井を見上げ、それがシスティーナ礼拝堂であるかのようなふりをする。
 婦人は取っ組み合いの末におい出された。床には大量の血がこびりついた。彼女は守衛の耳を噛み切ったのだ。
 彼女の勇気は賞賛すべきだと思うよ。
 僕の小切手は10弗だ。
 次に並んでいる2人はじつは1人。彼らはシャム双生児で、それぞれ自分の通帳を持っている。
 彼らのうちの一人は彼の普通口座に82弗を預けようとして、他の一人は彼の普通口座を閉じようとしている。出納係が3574弗を数えて渡すと、彼はそれを彼の側にあるズボンのポケットに蔵った。
 こんなふうに時間が過ぎていく。僕は再び銀行の天井を見上げるけれどもうそれがシスティーナ礼拝堂であるかのようなふりはできない。僕の小切手は汗に濡れて、1929年に書かれたみたいになった。
 僕と出納係の間にいる最後の人はまったく個性のない見てくれだ。かろうじてそこにいるような没個性だ。
 彼は237枚の小切手を窓口に置いて、当座預金口座に預けようとしている。それらは併せて48万9000弗。彼にはまだ普通口座に預けようとしている611枚の小切手がある。それらはしめて175万4961弗。
 紙吹雪のように彼の小切手が窓口をおおいつくした。出納係は長距離走者のように手続きを始めるが、僕は裏庭の骸骨は結局のところ正しい決断を下したんだな、なんて思いながらそこに立っている。


Complicated Banking Problems, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-18 19:42 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
アーネスト・へミングウェイのタイピスト
 なんだか宗教音楽だな。僕の友人がニューヨークから帰ってきて、そこでアーネスト・ヘミングウェイのタイピストに清書してもらったんだってさ。
 奴はできた作家だからそこで最高のタイピストに会ったんだけど、それが何とアーネスト・ヘミングウェイの清書をしたときたもんだ。びっくりしちゃうよね、沈黙で肺が大理石になっちゃう。
 アーネスト・ヘミングウェイのタイピストだってさ!
 彼女は若い作家たちの夢を、ハープシコードのような手と完璧なまでに強烈な眼差し、それらに続く深遠なタイプ音でかなえてくれるんだ。
 奴は彼女に時給15弗を払ったんだって。配管工や電気工が貰うのより多いんだぜ。
 日給120弗!タイピストに!
 奴は言ってたな、彼女はなんでもやってくれる、って。原稿を手渡すとなんだか奇跡みたいに綴りを直してくれるし、涙が零れるくらいに美しい句読点を打ってくれるし、ギリシャ神殿みたいな段落に分けてくれるし、文章を終わらせてもくれるんだぜ、って。
 彼女はアーネスト・ヘミングウェイの
 彼女はアーネスト・ヘミングウェイのタイピスト。


Ernest Hemingway's Typist, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-18 19:38 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
スカルラッティ論争
「サンホゼのワンルームでヴァイオリンの練習をする男と暮らすのはとても大変なのよ。」と空になった回転式拳銃を手にしながら彼女は警官に言ったのだった。

The Scarlatti Tilt, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-18 19:34 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
リチャード・ブローティガンの詩
カフカの帽子
屋根の上に雨が降る
外科手術的に降る
カフカの帽子のような
アイスクリームを食べる

Kafka's Hat
With the rain falling
surgically against the roof,
I ate a dish of ice cream
that looked like Kafka's hat.


僕は二十世紀を生きている
僕は二十世紀を生きていて、
君は僕のそばに横たわる。
眠っている時は不幸な君。
僕には何もできなかった。
僕は絶望した。
君の顔は描写しきれないくらい美しくて、
眠っている間の君を幸せにすることは、
僕にはできないんだ。
I Live In The Twentieth Century
I live in the Twentieth Century
and you lie here beside me. You
were unhappy when you fell asleep.
There was nothing I could do about
it. I felt hopeless. Your face
is so beautiful that I cannot stop
to describe it, and there's nothing
I can do to make you happy while
you sleep.

キュクロプス
レモネードのコップは
世界中を旅した
キュクロプスの目のように
もし子どもがレモネードを
飲まなかったら
 ユリシーズが飲むさ
Cyclops
A glass of lemonade
travels across this world
like the eye of the cyclops.
If a child doesn't drink
the lemonade,
Ulysses will.

墓地の月光
月光は数十万マイルを漂って
墓地に落っこちる

そいつは百の墓碑銘を読む
赤ちゃん梟の巣に微笑む
Moonlight on a Cemetery
Moonlight drifts from over
A hundred thousand miles
To fall upon a cemetary.

It reads a hundred epitaphs
And then smiles at a nest of
Baby owls.

冬の日没
傷ついた熊の
黒い体毛の上に
緋色の一撃
Winter Sunset
A slash of scarlet
On the black hair
Of a wounded bear.

黄昏の川に一番星
黄昏の川は
丘の上を流れて
谷を覆って
やわらかく冷たい水。
家のベランダで
僕は弟の隣に座り
お星さまに恋をした
お花の話をしてあげる。
話を終えた時、
弟は黄昏の川の上にある
一番星を指差して
「あれがおほちちゃま?」
First Star on the Twilight River
A river of twilight
Flowed over the hills
And covered the valley
With its soft, cool water.
I sat beside my little brother
On the front porch, and I
Told him a story about
A flower that fell
In love with a star.
When I finished the story,
My little brother pointed
At the first star
On the twilight river,
And he said,
"Is dat da star?"

蝶の呼吸
月は影を夜になげかけ
影は薔薇の誕生のように静かに
影は蝶の呼吸のようにやわらかく
Butterfly's Breath
The moon throws
A shadow upon the night.
The shadow is as silent
As the birth of a rose,
And the shadow is as soft
As a butterfly's breath.

二番目の王国
星々の最初の王国では
みんな半分だけ美しい

君の指の爪は、
長い夜を楽しんで
眠っている天使たち

目の音は、
風の階段を
降りてくる雪

あなたの髪は、
主が摘んだ
花の色

星々の二番目の王国には

君だけ
The Second Kingdom
In the first kingdom
of the stars,
everything is always
half-beautiful.

Your fingernails
are angels
sleeping after
a long night
of making love.

The sound of
your eyes: snow
coming down
the stairs
of the wind.

Your hair
is the color
of God picking
flowers.

In the second
kingdom of the stars
there is only

you

詩篇
東オレゴンの
農夫が
鶏小屋で
イエスを
見た。
イエスは
そこに
つっ立って
卵の籠を
抱いていた。
イエスは
言った
「腹減った」
農夫は
見たことを
誰にも
話さなかった。
Psalm
A farmer
in Eastern
Oregon saw
Jesus in
a chicken
house.
Jesus was
standing
there,
holding
a basket
of eggs.
Jesus said,
"I'm
hungry."
The farmer
never
told what
he saw
to anyone.

洗面台 
クレイさんは安宿に住んでいて
洗面台におしっこをする
クレイさんには家族も友達もなく
もし明日クレイさんが死んだら
彼は洗面台におしっこするのをやめる

The Sink
Mr. Clay lives in a cheap hotel
room and he pees in the sink
Mr. Clay has no family or friends
If Mr. Clay dies tomorrow he’ll stop
peeing in the sink.

孔雀の歌
メキシコのバスでまごついていた
美しいインディアンの娘を覚えている

彼女は靴を履いてなくて、両脚は
汚い床に転がった二つの乳房のようで

彼女はかた一方の脚で
もう一方の脚をくるもうとしていた
The Peacock Song
I remember a beautiful Indian girl
sitting embarrassed on a bus in Mexico.

She had no shoes and her feet were naked
like two breasts lying on the dirty floor.

She tried to cover up one foot
by standing on it with the other foot.


僕たちの猫が
扉と窓とになる日がある

寝室へ行くのに
爪で鉄の鼠をとらえた
木製の猫を開けなくちゃ

空を見るには
何かをこなしている
猫の胃袋を見なくちゃ
   ―鳥かな?
The House
There are days when our cat
becomes the doors and windows
of the house.

To go into the bedroom
I must open a wooden cat
that has an iron mouse
in its claws,

and to look out the window
at the sky I must peer
through the stomach of a cat digesting
―is it a bird?

君の愛
君の愛を
誰かが必要としている
僕じゃないよ
Your Love
Your love
Somebody else needs it
I don't.

考古学旅行のちっちゃな舟
ぬるい雷にいなづま嵐
今夜の東京はたくさんの雨と傘
    午後十時
これはたった今のちっちゃなあらまし
でもとっても重要なこと
数百万年後に考古学者が
僕たちの遺跡を吟味して
僕たちの暮らしを描き
  出す
A Small Boat on the Voyage of Archaeology
A warm thunder and lightning storm
tonight in Tokyo with lots of rain and umbrellas
around 10 P.M.
This is a small detail right now
but it could be very important
a million years from now when archaeologists
sift through our ruins, trying to figure us
out.

あら探しの缶切り
この詩には間違いがあります
見つけられるかな?
Critical Can Opener
There is something wrong
with this poem. Can you
find it?

1969年4月7日
今日はいけすかない日
詩でも書きたいな
どんな詩でもいい
 こんな詩でも
April 7, 1969
I feel so bad today
that I want to write a poem.
I don't care: any poem, this
poem.


作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
Richard Brautigan Bibliography and Archive
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by suikageiju | 2010-03-01 09:33 | 翻訳 | Trackback | Comments(2)