<   2012年 02月 ( 3 )   > この月の画像一覧
非公式文学フリマガイドブック小説ガイド第二回編集会議
 2月11日土曜日にして建国記念日の午後3時。佐藤の佐藤さん、LOLの屋代さん、BLANK MAGAZINEの吉永さん・野条さん、そして西瓜鯨油社の牟礼鯨の総勢5人が神田にある取調室の如き貸会議室ワーカーズ倶楽部Aルームに集合した。4人用の部屋にいい齢した大人が無理して5人も揃い、暑苦しく膝と膝とをつきあわせて、これは一体何のために? それは勿論、昨年末に話し合われた「非公式文学フリマガイドブック 小説ガイド」の企画進行具合の確認と今後の進行調整について話し合うためである。君はきっと「おかしい」と思うだろう。前回は佐藤・屋代・鯨の変態3人組しかいなかったのに、なぜ今回はBLANK MAGAZINEというお洒落雑誌の2人が来ているのか、と。鯨も彼らの突然の参入には驚いた。聴いたところによると、この2ヶ月の間に佐藤氏が2人を勧誘して編集会議のメンバーに加えたというのだ。これで、未熟なまま体裁をなんとか整えるはずだった「小説ガイド」はデザイン面で戦力補強されたのである。
f0208721_23315576.jpg


 会議室の机に検討すべき同人誌を所狭しと並べ、微糖コーヒーとアルフォートを片手に運命共同体の5人は議論の階上に議論を重ねた。「この本はガイドブックに載せるべき内容のものか」「この作家は今回は出さず、次回作以降に期待した方がいいのではないか」「この本は今回俺が持って帰って読む」「このメールの送信者は本当に実在するのか」、忌憚ない意見の飛び交う編集会議は荒れに荒れ、前回と同じように事態を「拳で解決する」という事態に陥った。鯨は本を手放さない屋代さんの肝臓を殴り、野条さんはスズメバチの刺突のようなパンチで何も考えていなかった佐藤さんの顎を砕き、佐藤さんは佐藤さんで、いきなりの脱衣、そのうえで「おっぱい甲子園」の歌を歌い出した。そんな阿鼻叫喚の有様でも、5人はこのガイドブックをおもしろいもの、価値あるものにするためにはどうしたらいいか、文学フリマを盛り上げるにはどんな一石を投ずればいいのか、それら共通の目的のために真摯にひたむきに意見を闘わせ、集約された議決を蓄積していった。どんなに自分の文学的信念、思想信条が危機に瀕したとしても、5人はその目的だけは北極星のように見失わなかった、それだけが救いだった。そして会議開始から2時間後には「これは恥ずべきところのないガイドブックができるのではないか」そう思えるような青写真を、5月6日第十四回文学フリマに向けて提示することができるようになっていた。何かを達成した5人の目は脂ぎった野心によってぎらぎらと燃えている。鯨はそんな文学使徒たちの煮えたぎるような野性の姿を見て、身が震えた。これはイける、文学フリマの小説ジャンルのあり方を更新しうるガイドブックを世に送り出せるだろう、そう確信した。午後5時、5人は充実感とともに会議室を出て、神田の街の清澄な空気を吸った。
f0208721_23321324.jpg


 それからは打ち上げである。5人が同じもつ鍋をつつきあい、30代を超えた女性文芸同人作家の問題や文学フリマの展望、文藝と批評の温度差、文藝同人同士の交流の問題を語らい合い、やはり声優よりも二次元の方が可愛いと結論づけられた。そして新規参入のBLANK MAGAZINEにおける書き手とデザイナーとの出会いのすばらしさを何度も確認しあうことになる。この一次会でBLANK MAGAZINEの2人は帰路につき、鯨と屋代さんと佐藤さんの3人は神田の街を堪能すべく地下のパブに入っていった。
f0208721_23323122.jpg

 そこで話されたのは他愛もないことだ。LOLの参加メンバーの異常さや文芸同人界に巣喰う「踏み越えてはいけない先へとイっちゃった人たち」の話題、自費出版で営利をもくろむ出版社の問題など。それから『ガリア女』が「牟礼鯨はこちら側(変態)の人間ということの証明になった」というお言葉を戴き、あれを書いて世に問うて本当に良かったと実感した。またメンヘラ女を幾人もこなしてきた佐藤さんより、メンヘラ女の罵倒tweetは「好き」の裏返し、といういかにも手練れらしい意見をいただいた。ただこの意見が何の役に立つのかわからないけれど。そんなこんなで文学フリマ神田派の夜は更けていった。

 というわけで「小説ガイド」編集委員会は第十四回文学フリマに新刊で出す同人誌の自薦を募集しています。詳細はココ! 応募、待ってるよ!

前回の編集会議
[PR]
by suikageiju | 2012-02-12 00:06 | 文学フリマ | Trackback | Comments(0)
星を撒いた街

上林暁傑作小説集『星を撒いた街』

上林暁 / 夏葉社



 これは昨夕の古書ビビビ納品時に清算された利益で購入した夏葉社さんの本である。徳川店長曰く、夏葉社さんとは原田潤一郎さんと名乗る男性が吉祥寺で一人で切り盛りしている出版社とのこと。ホームページを見ると「いま生活をしている、都市の、海辺の、山間の、ひとりの読者が何度も読み返してくれるような本を作り続けていくことが、小社の目的です。」と書かれている。これは西瓜鯨油社の社是である「NON MULTA SED MULTUM」や『物語群』制作時の「列島放浪者が携える最後の一冊」という理念に通ずるところがあり、感銘を受け購入した。
 上林曉という作家を知らなかったけれど、この作家を知ることができて夏葉社さんとの出会いを幸運と呼べるようになった。『星を撒いた街』には七編の短編が収められている。短編は長編と違い、一篇一篇その細部までを支配できないと上々のものは書けない。そのことを前提として、短編の力量はたいてい最後で判ずることができる。書道の筆のぬき方と同じ心持である。「青春自画像」の「私たちは社に引き揚げると、社長以下、営業部の室に集って、サイダアを飲み、鮨を食い、するめを食った」や「諷詠詩人」の「私達は高い腰掛を降りた。連れの証券会社支社長は、話の間中、おとなしくじっと聞いていて、一言も言葉を発しなかった」の終わり方が特に秀でていた。今までの流れとは少しずれた描写を過剰に細部にまで見せて終わることで「おやっ? 」と読み手に強い読後の印象を残すのに成功している。これは余りずれ過ぎてもいけないし、勿論今までの流れをそのまま受けたものではその効果はなくなってしまう。大したものだ、と思って読んでいた。上林曉という名前はその短編「和日庵」で描かれていた鳴海要吉や秋田雨雀などといったエスぺランティストの名とともに記憶された。
[PR]
by suikageiju | 2012-02-05 22:16 | 感想 | Trackback | Comments(0)
『コルキータ』追加納品
 三宿での野暮用の帰り。池ノ上駅から下北沢駅まで一駅分の運賃を払うのももったいないので淡島通りを渡ると代沢から北沢への坂をのぼって道を左に折れた。茶沢通りに出ると右に曲がって、たどり着いたのは夜の古書ビビビさんである。今まで古書ビビビさんは昼間、それも開店してすぐの正午を襲っていたのだけれど、今回はほぼ初めてといってもいい夜の訪問となった。
f0208721_20195019.jpg

 夜の古書ビビビは暖かさで満たされていた。前回『ガリア女』を納品したのだけれど、敏腕店長の徳川さんがすべて売ってくださったので、密林社さんに在庫として眠っていた『コルキータ』8冊を返品してもらって追加納品したのである。苦渋の決断である。もちろんアマゾンで突如として空前のコルキータ・ブームが起こったらピンチなのだけれど、西瓜鯨油社のサークル運営者として数字が動いている拠点に冊数を置いておきたいというのは、責められることではないと思うのだむにゃむにゃ。
f0208721_2041528.jpg

 いつも西瓜鯨油社の本を置いていただいている出入り口前の棚に夏葉社さんの本がピース又吉さんの顔写真付きポップとともに置かれていた。徳川店長曰く数はかなり出ているとのこと。ネットで調べて見つけた「夏葉社は1万人、10万人の読者のためにではなく、具体的なひとりの読者のために、本を作っていきたいと考えています。」という島田潤一郎代表の言葉を読んで、こういう出版のあり方がひたひたと水の染み渡る様に広がってくれたらと思い上林曉『星を撒いた街』を購入してみた。

コルキータ

牟礼 鯨 / 密林社


[PR]
by suikageiju | 2012-02-04 20:42 | 古書ビビビ | Trackback | Comments(0)