崩壊

崩壊

オラシオ・カステジャーノス モヤ / 現代企画室


 2010年南アフリカW杯でホンジュラスが7大会ぶり2回目の出場を果たした。奇しくも組み合わせはチリやスペインと同じH組に入る。ヨーロッパ予選、南米予選、北中米カリブ海予選からのスペイン語圏の国が一堂に会することに、スペイン語とその文学の広がりを感じる。
 40年前の1969年、ホンジュラスとエルサルバドルの中米の隣国は移民問題や国境問題を原因に、そしてメキシコW杯への出場権を巡り、対立状態になった。最終試合前、エルサルバドルが国交断絶をほのめかし、3対2で敗れたホンジュラスが断交する。そしてエルサルバドル空軍の空襲により両国は交戦状態に入った。これが100時間戦争とも、エルサルバドル・ホンジュラス戦争とも、一般には「サッカー戦争」と呼ばれる戦争である。この戦争を境に度重なるクーデターが勃発しエルサルバドルは没落した。
 オラシオ・カステジャーノス・モヤはホンジュラス生まれのエルサルバドル人である。この『崩壊』はサッカー戦争を背景にホンジュラスの名門ミラ・ブロサ一族を主人公にした物語だ。第1部は国民党幹部エラスモ・ミラ・ブロサと神経症の妻レナ夫人のやりとりを中心に、娘エステル(テティ)とエルサルバドル人のクレメンテ・アラゴンの結婚を描く。そして第2部はサッカー戦争勃発を前にして緊迫した情勢のなかでのホンジュラスのエラスモとエルサルバドルにいる娘エステルとの手紙のやりとり。そして第3部はエステルとクレメンテの子供たち、エラスモの孫の代の物語になる。構成がわかりやすく、何より読みやすい。ロシア文学の熟練の読み手さえラテンアメリカ文学にはてこずるのだが、これなら簡単に読めるだろう。それでいてアル中更生会のクーデターとかトイレのドア越しの夫婦喧嘩とか「ラテンアメリカだよね」という笑いの要素もふんだんに盛り込まれている。16日にはセルバンテス文化センター東京で講演会も開催されるので、『崩壊』出版を機に中米の世界に足を踏み入れてはどうだろう。
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by suikageiju | 2009-12-13 15:48 | ラテンアメリカ文学 | Trackback | Comments(0)
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