アウラ・純な魂

フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)

カルロス フエンテス / 岩波書店


 幽玄美という奴が嫌いである、怖いからだ。この本の最後に収められた「アウラ」はリョレンテ夫人の結界を言葉だけで読者の頭に完璧に投影する。その情景は幽玄という他ない。映画「雨月物語」の影響を受けていると訳者の木村榮一氏は書く。ル・クレジオも「雨月物語」に触れていた。海外で観ることができた日本映画がそれくらいしかなかったのだろう。「おしん」みたいなものだ。ともかくこの話はおかしい。新聞の募集広告「若い歴史家求む。(略)フランス語の知識要。(略)月三千ペソ。食事付。(略)」ならまだわかる。でも「君はその広告に目を通し、最後の一行が四千ペソに変わっていることに気がつくだろう」もうこの時点で気付くべきだった、この勤め先はブラックだと。
 「女王人形」は超自然的な魅力があって良かったけれど、「生命線」や「純な魂」の人間的な魅力も良かった。「純な魂」の手紙って何のことかと思ったけれど、読み返してその手紙の意味がわかったとき、うへぇ、となった。
 カルロス・フエンテスはメキシコの作家である。作品はどれも流麗で良かったのだけれど、もう一歩だけ人間の方角へ踏み込んでも良かった、と思う。
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by suikageiju | 2009-12-18 19:09 | ラテンアメリカ文学 | Trackback | Comments(0)
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