『秋爽』、KOU、
AZUReLY BLUE SIDe
秋爽という文字には「秋人」が隠れている。澄み切って高い空と数枚の落ち葉とともに。
2人の人間がいるとする。その2人がお互いにわかりあえると思っていることはとても毒だ。そう思うことはお互いを蝕んでいく。お互いを台無しにする。ただ、それはとても幸福なことだろう。2人がお互いにわかりあえないと思っているとしたら、それはきっと後世に残るくらいに錯綜した往復書簡を残すだろう。そういうアリ方は誰もがうらやむものになる。
この世界に落ちているすべての思いを拾い集めて博物館の陳列棚に並べられ、ちょっとした解説と気の利いた題名を添えることができるのならば、人間は何も読まないし何も書かなくなるだろう。この世界は「ちょっとした解説と気の利いた題名」の刻まれた白いプレートで溢れ、芸術に分類されるような事象はすべて消え失せてしまうのかもしれない。そんな理想の世界と対極にあるこの世界の苦悩を、KOU氏は鮮やかに秋の空高くにちりばめた。もしかしたら爽花が実は「命」を受けた刺客で、秋人は兄の春綺によって殺され、爽花は「命」に従いつつも「己のワケ」によって春綺を殺そうとしている、冒頭3行でそんな展開を思い浮かべたことを、鯨ここに羞じ、この駄文を以て感想とさせていただく。