『スコシの領分』、日野裕太郎、
下町飲酒会 駄文支部
最近、日野裕太郎氏が女性に見えてきてしょうがない鯨である。日野氏は言わずとしれた創作文芸界屈指のファンタジー書き。毎回、クォリティの高いカバーをつけた文庫本を刊行していて、その律儀な姿勢には感服させられる。今回の『スコシの領分』には「スコシの領分」、「闇憑きのハコベ」、「探求中毒」の三作品が収録されている。いずれも典型的なファンタジーではなく、登場人物の心情に寄り沿った叙情詩の出来。基本的に日野裕太郎文学の登場人物はみな人生に対して真摯に生きているので安心して読める。と思っていたんだけれど、未だに「探求中毒」のラストの呪縛から逃れていない。