鳥久保咲人さんからヴァレンタインデー・チョコレートのお返しとして、ちょっと遅めのホワイトデー・プレゼントをもらった。
『チョコラード』
著者;牟礼鯨 様
中澤いづみ 様
発行日;2010年2月14日
発行所;西瓜鯨油社
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わざわざブースにいらして下さり、無料配布をいただいた。(ありがとうございます)
牟礼鯨様の「ペレイッラとカカオの森」と中澤いづみ様の「Simulation」の入った充実のお得冊子。
これで無料なのだから西瓜鯨油社はすごい。
ここでことわっておきたいのだが、鳥久保が西瓜鯨油社について語る際はどうしても贔屓して書いてしまいがちである。別に感想を大げさに書くとかサクラとかそういうわけではなくて、西瓜鯨油社の作品が個人的にとても好きだからである。しかし、この気持ちは西瓜鯨油社の本を一度でも読んだことのある人には少しは理解してもらえると思う。
そして西瓜鯨油社の美人売り子さん中澤いづみさんのファン(通称イヅマーというらしい)でもある。
これも一度彼女と会話をしたことのある人ならば分かるはずだ。
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さて、作品のほうだが、「ペレイッラとカカオの森」である。
まず、タイトルセンスに惹かれる。なにしろ「ペレイッラ」だ。ハズれるわけがない。
そして鯨様の作品のよいところは冒頭一文の敷居の高さ。
「雪のように白い太腿にカカオの粉をなすりつけて、一つの恋を成し遂げたつもりになっていたけれど、甘かった(本文引用)」
鳥久保はこの時点で陶酔してしまう。
語彙の豊富さはもちろん、どういう状況なのかと想像力が膨らむし、その映像が浮かんできてうっとりした気分になれる。内容はペレイッラという女王の話。
その物語は如何様にもとれるようになっている。
一人ひとり受け取り方がまったく違う。解釈の仕方がまったく違うはずだ。
それを意図して書かれている。
その世界でのひとつの物語を紹介することでまるで読者の反応を楽しんでいるかのように感じる。
こういった多様な解釈の出来る物語は人間にはなかなか書けない。自分の思想が必ず入ってしまう。
それが突き抜けたものとして、鳥久保は鳥になりたい人間の話を書く。
鯨様は鳥のように空を旋回する鯨の話を書く。
改めてそう感じた作品だった。
タダで読んでしまった。申し訳ない。
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それから中澤いづみ様の「Simulation」。
ご本人から書くことはそんなに…、と聞いたことがあったが、なんて素敵な短編を書くのであろう。
まったく、このローラの愛らしいことったらない。
ローラの達観した物言いや言動に惹かれる。
身もだえするほど生ぬるさのないところがさらに作品の世界観を高みへもっていっている。
ローラの気持ちはよくわかる。普通、自分を殺そうとするものからは逃げるが、ローラはその逆だ。
感覚が斬新であるが、その斬新さは作者にとっては斬新でもなんでもないのだろう。
作者の思想が非常に色濃く記されている印象を受けた。
彼女の未知なる内の世界をもう少し覗いてみたい欲望に駆られた作品だった。
総評となるが、西瓜鯨油社の作品は再読してこそ意味がある。一読ではおそらく足りない。
読めば読んだ分だけまったく違う話を読んでいる気分になる。それがよいところだ。
大人になってもう一度読んだら楽しめた、のではなくて、数ヵ月後にもう一度読んだらまた違う楽しみ方が出来た、そういうレベルだ。
こういう人がいる文章系同人がおそろしい。
そんな世界に属している自分。
おお、こわやこわや。
http://yaneuranoinja.blog82.fc2.com/blog-entry-16.html
文章系同人界のマドンナを怖がらせてしまったようだ。罪な文学結社よのう。