第十四回
文学フリマで牟礼鯨は西瓜鯨油社・鯨鳥三日以外にも他サークル発案企画に寄稿をしている。そのひとつは
ナタリー(イ30)さんの太宰治トリビュート企画『ただ、いっさいは過ぎていく』だ。ナタリーとはあのナタリーではない方、つまりワタリサエコさんのナタリーである。「太宰治」にまつわる、小さなエッセイを寄せてください、と公募していたのであまり太宰治に思い入れがないのに小学校時代のちっぽけな思い出を引っ張り出してエッセイに仕上げ、寄稿した。ポンコツ文豪・太宰治の恩恵を蒙りたいというよりも、ただ単にワタリサエコさんの本が欲しかった、そういう動機からの犯行である。
次は
エンハンブレ企画(D36)さんの『幻想生物事典』である。幻想生物事典といえばJorge Luis Borgesの
El libro de los seres imaginariosという先行イメージがあったのでそれを読み返してからと思ったら読み返さずに寄稿していた。既存の幻獣(この語句は既に矛盾しているけれど具体的には「春西狩獲麟」とか)は誰かがやるだろうから、kafkaesque creatureを新造してそれについて事典風に書こうと試みた。でも、それもやらずに拙著『物語群』を読み返していたら既にkafkaesqueな幻獣が載っていたので彼の生態を後世の古生物学者が文献や化石から考察するという形式で書いた。もう一篇投稿しようかと思ったけれどやめた。
最後に
佐藤(C68)さんから責任編集者として招かれたので、
『文学フリマ非公式ガイドブック 小説ガイド』にも参加した。それに関係して、そして関係せずともいろいろなことが起こって刺激的な半年間だった。やはり「何かが起こるといいな」では何も起きない、「何かを起こさなければ」で起こるか起こらないか半々くらいなんだと思う。常に行動的な活動をしていきたいね、お花見日和。