第十五回文学フリマの二冊と委託二冊
 来る11月18日(日)開催の第十五回文学フリマ、西瓜鯨油社では新刊『南武枝線』と『コルキータ』新装第四版を頒布する。それと同時に委託を受けて西瓜糖文学賞中澤いづみ賞受賞作家未青藍氏の無料配布本『少女孵化』と『文学フリマ非公式ガイドブック第二版(仮)』を頒布する予定。
 数年前までは地味な表紙の創作文芸本が多かったように思われるけれど、昨今は各サークル、宗旨変えでもしたのか文学フリマで頒布される本であっても派手な色彩をした表紙やアニメ風少女絵表紙で着飾った文芸書が多くなり、電車や公共の場で読書をする機会の多い人の創作文芸本読みを難しくしている。創作文芸本を外で読むな! カバーをかけろ!周囲の視線なんて気にするな! と叱咤される御先達もいるだろう。しかし、創作文芸本も外で読みたいし、文庫本ならなんとかなるとしても文庫読みでは同人誌特有のサイズのカバーはなかなか手に入らず、周囲の視線を気にしないような本で読書をしたい。
 ただ読む側から頒布する側に回ると、やはり派手な色彩をした表紙の方が文学フリマ逍遙者の目を惹いて手にとってもらい易いと考えるのも無理からぬ思いである。というわけで弊社も宗旨変えをしてちょっと派手目の本と地味な本を同時に刊行することにした。題して「北武プリンセス、原宿に降り立つ」である。
 まず埼玉県北部、県境を越えれば群馬県という田舎町在住の女子高生はたいてい三つ編みお下げで牛乳瓶底のような眼鏡を掛けている。そして、父親、祖父、曾祖父とはるか祖先を辿ると埼玉古墳群のどれかで眠っている王か国造という高貴な生まれだ。町会議員をしている父親の軽自動車(スズキかダイハツ)で送られて最寄り駅から宇都宮線とか高崎線とかその辺の路線に乗り、東京を目指して電車に揺られながら読むのが地味目な黄表紙の『南武枝線』である。
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 この痴漢礼賛に満ちた本を長椅子の一番端に腰掛けて読みながら、上辺だけのつきあいをしている学校友達の間で噂の埼京線先頭車両(恐くて入れない)での道ならぬ出会いと恋に胸をときめかせる古墳ギャル。この本、中身とは裏ハラに表紙の色合いは一昔前の英語の参考書のようだし、背表紙には何語かよくわからないけれどラテン文字が打たれているのでどことなく知的。荒川を越えて池袋駅かどこかで山手線に乗り換えて数駅、降り立つは原宿駅。近くの公衆便所でスーツケースにしまっておいた今時のロリータ服に着替え、髪を下ろし、同時に本も着替える。新しい本はローズ・ドラジェとヴェニス・ノワールのボーダー柄が表紙の『コルキータ』新装第四版。
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 この本はもうすでにいろいろな版で何回も読んであるから木蔭のベンチで腰掛けて頁を繰っても流し読みするだけの知性アピール。そして気に入った文を見つけるとそのフレーズを諳んじながら遊歩道を駆け出す桃色背黄青鸚哥。竹下通りで他県からのぼってきた子とすれ違えば(こんなのアンタ持っているの?)と誇らしげに『コルキータ』を見せびらかし、あきらかに東京出身と思われる洗練された子が歩いていれば(私は古墳ギャル。野毛大塚古墳しか見たことない子とは違う、あんな帆立貝の形をしたできそこないと一緒にしないで)と自分に言い聞かせる。心に抱くは前方後円墳、腕にはいつも『コルキータ』。
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by suikageiju | 2012-10-23 08:05 | 文学フリマ | Trackback | Comments(0)
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