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サークル閉鎖。
by 鯨
花泥棒と秘密の猿たち
実は錦糸町にある東京簡易裁判所墨田庁舎、そのなかにある所謂墨田分室と呼ばれる場所に、鯨は出頭した。取調室で何者でもない男たちと数語話したあと、予定のない鯨はTOHOシネマズ錦糸町で12時40分上映開始のヱヴァンゲリヲン新劇場版Qを観ることにした。チケットを買って、その前に腹ごしらえをしたイタリアンレストランで読破したのが少年憧憬社『花泥棒と秘密の猿たち』である。
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100頁くらいまではそういうネタで来たかとニヤケ顔で読んでいて、村山春樹っぽいなーと思っていたんだけど120頁で仰天して今までの頁をめくり返しバンドのことも買い物のこともそして脊椎による「王様」のことも、巧妙に張り巡らされた罠だと知って自分の凡庸さと不用心さとを呪った。なるほど6頁で得た微かな違和感からすぐに気付くべきだったし、鯨はとても迂闊だったのだ。きっとわたりさえこ女史ならその6頁ですべてを悟っていただろう。そして最後の一行で作者に蹴落とされる。この叙述トリックをこの場で明かしたらいけないという思いの丈をぶちまけたとしたら、著者栗山真太朗氏に胸倉をつかまれ「俺の小説がネタバレごときでつまらなくなるとでも思ったか」と問い詰められ、鯨は失禁し、太平洋を己の尿で染めただろう。たぶんここですべて明かしてもこの小説はその価値をいささかも失わない。なぜなら一番好きな場面は翼君とピグマリオン・ナンバー7188氏との最初の邂逅場面だからだ。
by suikageiju | 2012-11-20 18:13 | 感想
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