青春の逆説
 なんばグランド花月の前、ジュンク堂書店の下にNMB48劇場がある。そこで公演を行うNMB48と云えば山田菜々だけれど、NMB48のファーストアルバム「てっぺんとったんで! 通常盤Type-B」には「太宰治を読んだか?」という曲が収録されている。これはおかしい。それは太宰治好きで文学好きを名乗るのは邪道、という意味ではなく、なぜ千日前に拠点を構えるNMB48が織田作之助ではなく太宰治なのかという疑問だ。もちろんこれには「なにわなでしこ」で共演したピース又吉の影響もあるのだろう。でも大阪なら、千日前なら織田作之助であって欲しかった。

青春の逆説

織田 作之助 /


 この本のちょうど半分のところに「待ってました!」という台詞がある。これは前文の豹一の「待ってましたと思ったくらいだった」に呼応した無名観客の台詞である。この台詞を境に前は道頓堀の勝と豹一の物語、後は東銀子と北山の物語となる。未熟者の鯨なら恐ろしくて改行の上にさらに一行空けただろうけれどここはオダサク、まるで一続きのようにして書いてある。やがて前後二つの物語は東洋新報と村口多鶴子の物語で収束するのだけれど、この台詞はその収束を予言するようである。また、ちょうどテレビの画面を左右に二分割して同時進行している2つのストーリーを読み手が鑑賞しているような気分にさせることにも成功している。そういった技巧だけではなく豹一のひねた態度、織田作之助の短篇「世相」中の言葉でいえば「若さがないのが僕の逆説的な若さですよ」というような態度は青春の選択肢としてありえたはずだ。そうだったかもしれなかった思い出を懐かしむときにお誂え向きな一冊。
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by suikageiju | 2013-03-12 23:30 | 感想 | Trackback | Comments(0)
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