カラスが住む庭
秋水、志水了さんの文庫本『カラスが住む庭』
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入稿後のぐったりとした体をかかえて読んだ。行方不明になった兄を探す白永裕士のストーリー。舞台はとある町の「カラス通り」と呼ばれる路地である。この路地にはヤバい薬を製造する「研究所」や兄の洋士が働くカフェがある。ここで路地と書いたのは、この本に書かれた「カラス通り」は中上健次の小説で描かれた「路地」のような、あるいはいわゆる「被差別部落」のような、非日常の場所として描かれているからだ。そこが面白いと思った。自分の町にもそんな通りがあったら、そしてもし自分がそこに関係していたら、この本に描かれているような日常に潜む路地裏ファンタジーを楽しめるかもしれない。もちろんこの本には血や憎しみや猥雑さに溢れた描写はない。ドライな筆致で兄や「カラス」、それをとりまく人々との争いが描かれている。それにアクション・シーンも盛りだくさんである。毒やえぐ味のない文体なので、文学中毒の禁断症状にある人には物足りないだろうけれど、そんな中毒者が毒気を抜くには良い。
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by suikageiju | 2013-03-20 20:06 | 感想 | Trackback | Comments(0)
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