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サークル閉鎖。
by 鯨
星砂の浜
 河内寿々(かわちじゅず)さんの作品。なぜこの本を読んだかというと無料サンプルをダウンロードして読んだら、話者が鹿児島新港からフェリーで出航していたからだ。目的地は奄美群島の与論島である。

星砂の浜

河内寿々 / 河内寿々


「与論島は境界の島です」
「境界?」
「ええ、日本と沖縄の境界の場所なんですよ」

 1953年クリスマスの奄美返還から1972年の沖縄返還まで、この島の南に横たわる海が日本国と琉球列島米国民政府の国境だった。国境の島、気が遠くなりそうな広がりを見せる奄美の海、胸が昂ぶる単語の並び。2008年秋、鯨はこの本の主人公と同じように鹿児島新港からフェリーに乗り込んだ。今までの人生を捨てて、新しい人生を南洋に見いだすために。無料サンプルの文章を読んでふと5年前のそんな逃避行を思い出した。だからDLしたのかもしれない。ちなみに那覇から鹿児島までフェリーで24時間かかる。一度お試しあれ。
 この本はAV監督諏訪清子の視点から、「薩摩文化活性化プロジェクト」のAV企画のための準備段階、そして与論島で島の男“まさ”との性交とAV撮影、そして東京に戻ってからの後日談を描いている。ねちっこいくらいな濃密さで描かれた、AV監督諏訪清子の心情のうつりかわりが秀逸。アダルトビデオ会社勤務とは云え、AV女優でもない女性が事情を知らぬ一般男性との性交を世間に曝すまでに至る過程、そしてAV撮影とはいえ他の男性と性交している傍らで子飼いのAV女優に彼氏を寝取られるに至ってからの心情の吐露、描かれた対象の選択もうまく、描き方も巧みである。まだまだkindleにも読むべき本は転がっていると感じさせられた一冊。
とうとぅがなし


by suikageiju | 2013-05-04 19:13 | 感想
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