20/20
 文学フリマで売られていたら絶対に「買い」の一冊。成人式のあとで催された高校のクラス会、そこで栗原花穂という語り部系女子がお母さんのお腹にいたときから身近で自殺した20人の物語をつむぎだす。20人が自殺して最後の自殺者は「嘉島ことり」なんだと分かっていると、ここまで安心して読めるのかと今、思い返している。良質な自殺エンターテインメント小説。

20/20

木地雅映子 / 木地雅映子


誰が自殺するのか分からない
 栗原が昔話をしていくうちにひとつひとつのエピソードで自殺しそうな人間が複数人出てくる。でもそれは人物紹介じみた前説なので、章題になっているX人目の自殺者がどういう自殺をするのか最後まで明かされない。そのためエピソード中の複数人が自殺するのかもしれないし、最後の方で付け足し程度に出てくる人物があっけなく自殺してしまうのかもしれない。え、そんな理由であの人が自殺……、今までのエピソード何だったの? ということもある。誰が自殺をするのか推理をして、それが正解かどうか確かめる楽しさ。犯人が別の人を殺す推理小説は鯨怖くて読めないけれど、これは自殺だから何だかほのぼのとしているよ。

自分の範囲わきまえていないんじゃない?
 「わたしのまわりでは毎年1人は自殺しているの」という悩みを抱えている女の子はよくいる。でもたいてい「まわり」の人はその人とは関係のないところで自殺している。たとえばそれは地域性の問題であったり、通っている学校の問題であったり。でもそういう悩みをかかえている女の子は全部「もしかしたら自分のせい?」→「きっと私のせいだあ」と思ってしまう。自分がどこの範囲まで制御できるのか、ちゃんと境界を設けていない。だから自分ではとうてい制御できない範囲までも自分の範囲内だと思ってしまう。でもそれって、君の範囲外なんじゃないのかな。そう、そこが境界石だよ。こっちに勝手に入ってこないでね。

 あまちゃんを演じる能年玲奈さんに是非この木地雅映子作『20/20』を読んで貰いたい。
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by suikageiju | 2013-08-25 10:05 | 感想 | Trackback | Comments(0)
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