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エス和新辞典
 大阪、中崎町にある書肆アラビクで石黒修編著の『エス和新辞典』(Moderna vortaro esperanto-japana、河野成光館、昭和13年再版)を見つけて300円で購入した。定価は1円50銭とのこと。アラビクの森内さんはかつて高名なエスペランティストにエスペラントの手解きを受けていたらしい。
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 この辞典には単語や用法はもちろん、文法やエスペラント史、通信便覧、参考書目が載っており、これ1冊持っていれば万国大会(世界エスペラント大会)にも参加できるくらいに充実した内容になっている。面白いのは、仮名でなんとかエスペラントの発音を表現しようとしていることだ。例えば子音は小文字で書いてあり、「R」は片仮名のラ行、「L」は平仮名のら行で表現されている。
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 この辞典が国際補助語エスペラントの学習に役立つのは勿論だが、平成生まれのエスペランティストにとっては昭和初期の日本語あるいは当時の日本人の語彙を知るのにも役立つ。たとえば「metano」(メタン)の訳語が「沼気」だったり、「frosto」(厳寒)の訳語に「冱寒」があったり、「perversa」(邪悪な)が「邪曲な、敗徳の」であったり。または歴史的なことでは「dancigo」(ダンチッヒ自由市)が主な国々として挙がっていて読みあきない。
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 特に巻末のAldonoj(増補)には言語委員会が選定した公用語が載っているのだが、なぜこんなものを載せたのだろうという単語も収録されている。例えば「agao」(トルコの将軍)、「aroki」(城形の駒で守る)、「oologio」(卵学)と別の単語による複合などで造語できる単語も含まれていて、ザメンホフの死後、戦間期エスペラント界の混乱をうかがえる。また「samurajo」(侍)といった歴史的単語もこの時期に公用語に含まれた。この辞典はエスペラント作文の際、意味の際どい単語を使うときに活用できるだろう。
by suikageiju | 2013-09-08 02:04 | 雑記
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