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サークル閉鎖。
by 鯨
本の杜4報告
 「台風18号で東京はひどいことになるのだ」とは思わなかった。午前6時に屋根を打つ雨音に起こされたとき「昼にはどうせやむのだろう」と信じた。人は台風接近の報に直面したとき、きっと自分はニュースに取り上げられるような甚大なる災害の被害者になるのだろうと思いこむ傾向がある。鯨はそこを逆手にとった。「特別警報になるやもしれぬ」という予想が思い浮かんだと同時に「きっと今日のうちは大したことにはならないのだ」と直観したのだ。まだ台風は上陸せず、ちょっと前線がぐずついただけに過ぎない。数サークルがTwitterで参加とりやめを示唆するなか、鯨は直接搬入用のダンボールを緩衝材のビニル袋で包んだ。
 小田急線も山手線も京浜急行も少々の遅延があったものの運行休止にはならず、ちゃんと動いていた。そして問題なく9時15分ごろに新しくなった京急蒲田駅に着き、その10分後には大田区産業プラザPiOに到着して会館前に待機列が出来ていることに驚いたけれど、よく考えればそれは1階大展示ホールの蒲田鎮守府の一般待機列だった。
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 2階小展示ホールへ行くとすでに机と椅子の設営が終わっていた。鯨はスタッフ証をもらい「A」「B」「C」「D」の紙を机の端に貼った。カタログをもらうと西瓜鯨油社の紹介文の半角空白が半角の「?」に文字化けていた。改行は反映されていなかった。アグロシさんは細面に困惑を浮かべながら弊社ブースへ寄ってきてカタログを開きアグロシ文庫の紹介文を見せてくる。読むと出だしが一文字欠けていて、しかも同じ文章が3回くりかえされていて狂気じみていた。「主催に悪意はない」ということで2人の意見は一致したが、読みにくく配置図のない不親切なカタログを2度と開くことはなかった。
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 スタッフとしての仕事がなくなるとブース設営をはじめた。ダンボールは防水が不完全で『オルカ』の7冊くらいが濡れてしまった。そのうち天地は濡れたけれど小口は乾いている3冊の奥付に「水濡れ無料配布」と追記してチラシ置き場に置いた。
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 予定通り11時に6割方が埋まった状態ではじまった本の杜4であったけれど、遅れてやってきたサークルが加わって午後になると9割方のブースは埋められた。午後にはもう雨はやんでいたのだ。ただ一般参加者は少なかった。もちろんいなかったわけではないけれど少なかった。それと期待していた蒲田鎮守府からの流れ人は10人くらいであったように思う。台風なのに来場してくださった方は勇敢者として称えたい。サークル数が本の杜3よりも増えた分、一般参加者の比率の低さが目立った。「読んでもらいたい人は多いけれど、読みたい人は少ない」そんな作文界隈の現実が浮き彫りになった。悲しいけれどこれが現実なんだ。
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 今回も休憩所にお茶と珈琲とスナック菓子が提供された。たった500円で4時間強も見本誌読み放題で居座れる「蒲田文芸カフェ」が出現したのだ。もっとこの点を主催はアッピールすべきだと思う。だって本の杜の取り柄って、この休憩所と見本誌くらいじゃないの? もしくは委託サークル専門イベントにすると云う手もある。鯨は少しだけ委託受付に座っていたけれど、思っていた以上に委託サークルさんの本が捌けていた。「サークルの人がいると選びにくい」という層にこの委託サークル専門イベントは受けるかもしれない。
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 15時半に、本の杜4はとくに盛り上がりを見せないまま静かに幕を閉じた。撤収の後、17時半から公式打ち上げだったが、そこまで待っていられないのと、会費が4000円と高額なので、鈴木さんが引率し、伊織さん、クロフネ三世さん、高村さんと鯨の5人でJR蒲田駅西口の鳥万3階で非公式打ち上げを執り行った。自己承認欲求とニューアカ風潮と下ネタ受容における性差について文学部3年生的な談義を交わし、それぞれの路線へと帰って行った。非公式打ち上げが終わったとき、昼に本の杜が開催されていたことを覚えている者は、少なくともその5人のなかには1人もいなかった。

 帰宅してから収穫品を整理した。
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・『星を食べる少女』、田島大、新嘲文庫
 鉄道物の師匠。

・『夢の降る街』、水無月美伊、紫陽花宮
 なんだか読みやすかった。

・『飄々』(第67号)、大東文化大学文化団体連合会國文學研究会
 無料配布。

・『軸』、南風野さきは、片足靴屋
 委託本。装丁と値段を見てこれは買うしかないだろうと思った。

・『猫少年二篇』、少年憧結社猫
 銃をベースに持ち替えて戦う二人の写真が良い。すべての楽器を武器に。

・『断片集』(ver.130915)
 いつの間にかおしゃれな装丁になっていた。

・『脅す人形』、乃木口正、妄人社
 棒人間が気に入った。

・『書物回廊――俗・ある濫筆狂の記録から』、鈴木真吾、C-ROCK WORK
 
・『鉄人四迷の十二迷』、鉄人四迷
 「ドゴン」が殊の外良くて購入。

・『出雲残照』、唐橋史、史文庫
 唐橋さんの本は今まで2冊くらい読んだことがあるけれど今回はじめて購入。歴史物は史実どうかはともかく「歴史」によって裏打ちされたコンテンツとしての魅力がある。たまたま『赤朽葉家の伝説』を読んでいて伯耆国から出雲国あたりに興味を持っていたので。

 本の杜5は2014年3月9日に川崎市産業振興会館にて開催とのことだけれど、次回は参加するのかどうかはじっくり考えてから決めたい。
by suikageiju | 2013-09-15 23:58 | テキレボ・本の杜
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