羊頭狗肉ではない本
 新刊『受取拒絶』の表紙は当初の予定では下のような感じだった。『南武枝線』が縦横であろうとするなら、『受取拒絶』は斜めであろうとする筈だった。
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 ある日、校閲をお願いしていた高村暦女史(非公式ガイドブック最高責任編集者と同一人物)に「表紙はこんな感じだ」と上のデータを見せたところ、「ぜひ私に表紙もやらせて欲しい」と懇願された。女史の表紙は幾何学的感性に訴えかけないと常々思っていたけれど、所詮表紙なんて読むときには革カヴァーで隠してしまう他の本との識別にしか用を為さない代物に過ぎない。それに「やらせて欲しい」とまで言われて断るのも忍びないと思い、女史に任せたところ下の表紙になった。
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 悪くない。しかしこれには罠があった。納品の際、女史から何個も画像ファイルが送られて来た。そのうち一番サイズの大きなファイルαは開けなかった。「これはダミーか」と思い、その開けないファイルαは無視した。そして納品されてからすぐにjpgファイルのうち、一番サイズの大きなファイルを印刷会社に入稿した。それからは非公式ガイドブックの作業をしたり、伊織さんに寄稿する話を書いたりして日々を過ごした。しかし、入稿から2週間ほどたったある日「表紙はどのファイルを入稿しましたか」と女史に訊かれ
「一番サイズの大きなjpgファイルを入稿した」
 と返答したところ、psdファイルで入稿するのが正解だ、と告げられた。つまり開くことができず「ダミーか」と思っていたファイルαが入稿すべきデータであったというのだ。今言うなよ、である。普段よく眠れる人も眠れない夜を過ごすことになるだろう。いつもイベントで「それでは、眠れない夜を」と女史に言っていたことの意趣返しなのであろうか。こんな非道はいつぞやのタトホンで冷亜暦というサークルに世田谷本と騙されて全然世田谷と関係のない合同誌を買わされて以来のことだ。
「どんな画質になるんだ?」
 と訊いたところ「少し暗くなります」と返ってきたので安堵した。暗くなる分には問題ない。それに表紙に瑕疵があった方が巷にあるような羊頭狗肉本になるよりは良いし、西瓜鯨油社の本を買う人にマンガ風の絵を厭う人はいても表紙を気にする人はいないだろう。しかし当日ブースで『受取拒絶』を手に取って、少し暗いなと感じたら、どうか高村暦女史の腹黒さが本から光を奪ったのだと思ってあげて欲しい。
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by suikageiju | 2013-10-24 08:06 | 文学フリマ | Trackback | Comments(0)
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