ミスボドの主催というイメージが強く、小説を書いている印象が薄かったけれど、そういえば絶対移動中に寄稿していたし、西瓜糖文学賞にも寄稿してくれたよね、というより、ゆる本と生本それにパソコンゲームといった媒体で著作を読んだことある、といった内容を
雲上回廊ブース前でグダグダと述べていると、当の秋山真琴氏に
「鯨さん。寝言は寝てから言ってください」
と話を遮られ「はい、これが新刊です。これでも持って天上界に帰ってください」と持たされたのがこの本である。勿論ちゃんと代金は徴収された。
久し振りにつくりこまれた世界での学園小説を読んだ。奇妙な名を持つ登場人物たちを操る技量は、先の文学フリマ打ち上げで50人にも及ぶ半端者を整理した技量にも通じる。Re:Worldという仮想世界、その華久楽大付属雅高等学校で催されたクラス対抗レクリエーションの目的は十三不思議の一つ〈綾解異聞〉を手に入れることだった。p.104のとある一文から記憶喪失の少年、習志野言がこの本の鍵だろうと鯨が思いはじめたのは決して偶然ではなく、
インタビュでの回答のように、鯨と秋山真琴氏の関心事項が近似していたことから来る必然だろう。また、西域語、中央語、極東語といったネーミングセンスが好ましく、十三不思議や六つの学園などの設定も楽しんで書いている様がアリアリと思い浮かんだ。それにしても、これだけの世界観でこれほどの数のキャラがいるのに224頁ではそれぞれのキャラを印象付けるエピソードが、そして何よりも紙幅が足りない。たぶん続篇があるのだろう。八神学長とか。