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サークル閉鎖。
by 鯨
非公式ガイドブック2014年春号(通巻第5号)推薦作決定会議
 「非公式」は補集合の代名詞だった。精神的指導者(アイドル)をつくり何かと群れたがる文学フリマ参加者のなかでそういった集合から漏れた嫌われ者クラスタたちの掃き溜めが文学フリマ非公式ガイドブック小説ガイド編集委員会であるはずだった。佐藤、屋代秀樹、牟礼鯨、そういった犬畜生、人外鬼畜、海棲哺乳類がいたころ、「非公式」はなかなかひとつにまとまらず、まだ補集合でいられた。
 でも、今や「非公式」は固有名詞となっている。何かと人望を集めている高村暦、猫をかぶった山本清風、そして銀河系最強の秋山真琴などまずまずの人格者を責任編集者に据えてひとつの集合を為しはじめた。だからだろう、今回から「非公式」ならではのカラーが出来てたように感じられる。もはや補集合には戻れないのか。

 2月16日10時40分ごろ地下鉄神保町駅に着いてホームを歩き扉が閉まったとき、Deity's watchdogと書かれた近江舞子さんの黒いトートバッグを半蔵門線の車内に置き忘れたことに気付いた。文芸同人誌入れとして重宝しており、いつもそれには数冊の文芸同人誌が入っていた。改札口の横にある駅事務室へ行き、駅員さんをけしかけて押上駅と北千住駅で回収作戦を決行したけれど、いずれも失敗した。11時からレイアウト会議であったので神保町交差点の集合場所で待っていた高村暦女史に会いに行き遺失物の件を告げた。11時15分くらいになっていたが、組版係のわたるんはまだ来ていないばかりか遅刻の連絡もないらしい。そこで高村女史の提案により、遺失物のデータベースにそのトートバッグが載って連絡が来るまで神保町のカフェめぐりをすることにした。
 カフェめぐりといっても中に入ったりはしない。犬尾春陽氏に教わった神保町カフェ・リストから非公式の会場に相応しいお店を外観と窓からのぞき見た内装から選ぶだけの作業である。雪の残る靖国通りとすずらん通りを女史のあとに従い歩く。
 それにしても、犬尾氏は迂闊だ。彼女が紹介したお店はほとんど日曜祝日休業だった。神保町は古本街とは言われているけれど、その実態は問屋街である。つまり平日に働く職業人のために賑わう街であり、日曜祝日になんて来るべき街ではないのだ。ましてや珈琲を飲むなんてことは。それは名高きさぼうるが日曜日定休であることから考えて分かるはずだろう。犬尾氏もそうだが、鯨は日曜日に神保町を開催地に選んだ高村女史も迂闊だと思った。会場となったギャラリー珈琲店古瀬戸は日曜日でも開いていた稀な例である。
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 文学フリマ非公式ガイドブック2014年春号(通巻第5号)の推薦作つまり掲載作決定会議は13時半過ぎから高村暦、秋山真琴、伊藤なむあひ、そして遅れてやって来た山本清風、真乃晴花の5人で、名雪大河が描く蛙たちのただなかではじめられていた。そこに牟礼鯨はいない。13時半から14時過ぎまで鯨は再び半蔵門線に乗って黒いトートバッグが見つかったという清澄白河駅までそれを取りに行っていた。今回、鯨はただの一冊も推薦していない。そんな非公式ガイドブックの制作に非協力的な人が会議で口を挟むのも可笑しいので会議よりも遺失物回収を優先させたのだ。もちろん、もう編集サイドからは外れた、ただのオンブスマンでありたいという願望もその選択には込められている。
 遅れて古瀬戸へ向かう。すでに会議は盛り上がりを見せていた。くっつけられた3脚の青い丸テーブルを囲むようにして座り、推薦作を全作品を読んだ責任編集者3人を中心に推薦作一冊ずつにそれぞれが意見を投げかけあっている。伊藤なむあひ、真乃晴花、牟礼鯨、この3人はその場にいるけれど俎上にあがっているすべての作品を読んでいるわけではない。単に偶然買って読んでいたか、それとも現物が目の前のテーブルの上に載っているかして得た情報をもとに、あるいはただ純粋に推薦者が書いた推薦文を読むだけで議論に加わっている。これは推薦作そのものへの評価もそうだけれど、それよりもその作品を推す推薦文への評価にも重きを置いているのが非公式ガイドブックだからだ。ゆえに推薦作をあまり知らない人が推薦文を読んでどう思うかを探るためにも未読者の存在はこの会議に必要である。幸運と努力の賜物だろうか、掲載する推薦作はその日のうちに決まった。けれど、まだ容赦がありすぎるように思えた。鯨の主観では「え、こんな本が?」という数作に誰も拒否権を発動しなかったのだ。
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 会議はやがて掲載が決まった推薦作をどの評定担当者にまわすかを決めるテーマに移り変わった。評定担当者は推薦者の推薦文を相対化する。評定文は推薦作への評価を推薦文から読み取れる内容で固定化しないように機能する。その調整を行うという観点で評定担当者の割り振りが決められる。この割り振りにこそ責任編集者ならびに編集委員会の意図が込められている。
 最後には推薦作が載せられている頁以外をどうするかというテーマで話し合われた。いわゆるサークル紹介頁についてである。このとき鯨はその前のテーマで鯨に割り振られた推薦作の評定文をその場で書いていたのでほとんど話を聴いていなかった。ただそこでも厳かな決定が下されたことは確かだろう。
 16時に会議は終わり、その後はミスボドの秋山真琴が持って来たボードゲームを遊ぶ。まずは「詠み人知らず」、次に「藪の中」である。しばらく楽しんだあと、遅れて横浜からやって来た栗山真太朗を迎え、名古屋へ帰る秋山真琴を見送り、パパ・ミラノ神保町店にて無口な6人は歓談した。5月5日の第十八回文学フリマから話題を逸らすことはなかなかできなかった。
by suikageiju | 2014-02-17 23:40 | 文学フリマ
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