ケドマ
 こうして「シネマテーク・フランセーズ」を和訳していく企画も3日連続で更新である。明日は絶対に休もう。そういえばこの企画を考えたとき、新潮文庫を思い出した。新潮文庫は文庫ラインナップ紹介文が好きだった。夏の昼下がりにあの短い紹介文を読むのがたまらなく好きだった中学生。
 今回はイスラエルの映画監督Amons Gitaiの作品である。つまりアモス・ギタイ氏。まったく聴いたことがない監督だ。そして題名はKEDMA。たぶんヘブライ語だろうけど意味が分からない。「ケドマ」、聴いたことがない。そもそもイスラエル映画は観ない、鯨が、あるいは日本では。アウシュビッツ収容所などユダヤ人がナチスに虐殺される映画はよく観るのだけれど、それ以後のユダヤ人を撮ったイスラエル映画はあまり観ない。これは鯨個人の趣向なのか、それとも日本人の趣向なのか。
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 とりあえず訳す。
1948年5月。英国の委任統治は終焉したのに、ユダヤ人とアラブ人はパレスティナで交戦している。ある老朽化した貨物船《ケドマ》号は約束の地へ向かって進む、全欧州から来たホロコーストの生存者数百人を載せて。パレスティナの浜辺の上でパルマッハ(ユダヤ人地下部隊)の兵士達は彼らを迎える準備をし、そして英国の兵士達は彼らの上陸を阻止しようとする。

 文法としてはalors que~の「~のに」くらい。1948年5月といえば第一次中東戦争が勃発している。WWⅡに勝利したばかりの英国はパレスティナに於けるユダヤ人国家樹立に前向きではなかった。そのためユダヤ人地下組織による反英武装蜂起や暗殺、内戦などが横行する事態になる。紀元直後のローマ人よろしくユダヤ人統治に手を焼いた英国は1948年5月に委任統治を断念し、「約束の地」の未来を国連に丸投げしてパレスティナから撤退した。そういった歴史を踏まえないとこの映画の紹介文は何のことか分からない。そしてパルマッハは英国が対独戦のために組織したユダヤ人部隊で書かれているようなl'armée clandestin juiveとは意味合いが違う。そんなパルマッハと英国軍。パレスティナの浜辺ではどんな闘争がくりひろげられたのだろうか。
 老朽化した貨物船が載せるホロコーストの生き残り、という叙景が美しい。まるでユダヤ神話に出てくる「ノアの方舟」みたいだ。あるいはオデュッセイアか。「シンドラーのリスト」を観たあとはこれ。それにしてもどんな映画なのだろう。
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by suikageiju | 2014-04-10 23:18 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
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