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スロー・ラーナー

スロー・ラーナー (ちくま文庫)

トマス ピンチョン / 筑摩書房


 アメリカの2人の謎の大作家のうち、サリンジャーは他界した。これはもう1人の謎の大作家トマス・ピンチョンの短編集である。やはり秀逸はピンチョン自らが書いた序「スロー・ラーナー」である。謎の作家が書いた、青年時代の作品を中年になって読んでみた感想だ。
あなたはすでにご存知かもしれない、何によらず二十年前に書いたもの――たとえ用の済んだ小切手に書いてある自分の文字でも――を読まなければならないということはエゴにとってどんな打撃になりうるかを。

これを含む最初の段落を読んでピンチョンの人柄に触れたようになる。さて、当の短編だけれど、これらは感想を書く種類のものではなく、ただ作品を読むものだと考える。読んでいくうちに言語化以前の何かが読者の中に形成される、その形成を、或いはその形成の結果である内なる感情を楽しむ類の作家だと思う。「小雨」は読んでいてヘミングウェイ的な、「武器よさらば」的な物憂さが形成していった。その結果として、なんとなくアメリカの中西部を旅したくなった。
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by suikageiju | 2010-01-31 20:05 | 感想 | Trackback | Comments(0)
第十回文学フリマ申込完了
 5月23日開催の第十回文学フリマの申込が完了した。サークル紹介文は、第九回でサークルの特徴を説明することに意を傾けすぎて失敗、というより空回り感を覚えたので、キーワードを増やし語句の力で読む人をひきつける文にした。いくら「思想に惹かれる人間」という風体を装っても、結局のところ人間は短い語句やキーワードの力に簡単にひきよせられてしまうもの。『1984』で描かれる新語法の「略語の多用」でその原理は描かれている。
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by suikageiju | 2010-01-31 09:44 | 文学フリマ | Trackback | Comments(0)
RIP JD Salinger
 『ライ麦畑でつかまえて』など著作で知られるアメリカ合衆国の作家サリンジャー(Jerome David Salinger)がNew Hampshire州Cornishの自宅で老衰により死んだ。享年91歳。1965年にニューヨーカー誌で『Hapworth 16: 1924』を発表して以来サリンジャー氏は新作を発表しておらず、公の場に姿を現しもせず、「謎の作家」と呼ばれていた。しかし彼は書くことをやめたわけではなかった。名声や本を売るためにではなく、自分の喜びのために書く、それは作家として幸福な晩年だったのだろう。
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by suikageiju | 2010-01-29 09:10 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
人狼

ボリス・ヴィアン全集〈7〉人狼 (1979年)

早川書房


 『うたかたの日々』や『心臓抜き』の作者ボリス・ヴィアンの短編集、古書ビビビさんで購入。一番楽しめたのが「ホノストロフへの旅」で、サテュルヌ・ラミエルが最後に床一面血の海のなかで「私はおしゃべりではないですね」と言うのを読んでゾゾゾとなった。「彼らは全員そこで降りた」のしめくくりでウヘェとなった。本当に降りれたのかよ、と。「のぞき魔」も「蟻」も良かった。この手の作家は最初に『心臓抜き』などから読んでしまうと、わけがわからなくてそれ以降その作家の本を手に取らなくなるかもしれない。鯨は幸運にも『うたかたの日々』からはじめたので読み進めているが、もしボリス・ヴィアンに興味のある方は『人狼』など短編からはじめることを勧める。
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by suikageiju | 2010-01-28 11:29 | 感想 | Trackback | Comments(0)
「第十回 文学フリマ」申込開始予定
 これが武者震いという奴か。とうとう待ちに待った第十回文学フリマの準備がはじまる。でもまだ6万7千字しか原稿が完成していない。
[文学フリマ]近日「第十回 文学フリマ」の申込開始予定
昨日は事務局の会合でした。
プレスリリースと郵送申込の書類を発送しました。
WEB申込は今週末を予定しています。
文学フリマ事務局通信

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by suikageiju | 2010-01-26 08:30 | 文学フリマ | Trackback | Comments(0)
アメリカの鱒釣り

アメリカの鱒釣り (新潮文庫)

リチャード ブローティガン / 新潮社


 西瓜鯨油社の名前の由来ともなったブローティガンの代表作。アメリカの鱒釣り周辺の掌編が収録されている。脳ではなく肌で読む本。この中では「木を叩いて その2」の
「いやあ、失敬」とわたしはいった。「あなたを鱒の川と思ってしまって」
「人違いだよ」と、そのお婆さんはいったさ。

と、鱒のいる小川を売っている「クリーヴランド建造物取壊し会社」が好きだ。これが本当に好き。もし鯨が株式会社を建てるとしたら、クリーヴランド建造物取壊し会社を建てるね。
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by suikageiju | 2010-01-23 20:37 | 感想 | Trackback | Comments(0)
わたしを離さないで

わたしを離さないで

カズオ イシグロ / 早川書房


 安定している文章に常に違和感がつきまとう。その違和感は少しずつ解けていって、最後にへールシャムの秘密が暴露される。キャシー.Hの一人称による語りに読者は感情移入する。しかし「人間」である読者は最後の最後で疑い出すだろう、「今までの読みは正しかったのだろうか」と、感情の綻びはひとつも無かったのかと。
 ファンタジーの醍醐味は、同じ「人間」の視点で語られているにもかかわらず、惑星や文化や人種の違いによって読み手が一人称による語り部との感覚のズレ、違和感を覚えることにある。女性の読者が男性の一人称語り部の作品を読んだときに陰茎が勃起する感覚について正しく理解できるとは思えない、そのことと似ている。『わたしを離さないで』で、鯨はキャシー.Hとなった。ある程度は正しく感覚を共にしたと思うし、ズレはなかったようだ。そのことに恐怖を覚えた。
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by suikageiju | 2010-01-21 08:58 | 感想 | Trackback | Comments(0)
コルキータ
Spin Quantum Numberの白草さんから感想をいただいた。

西瓜鯨油社さんの「コルキータ」を読み終わる。なんだか懐かしい感じがした。そして、読んでいて楽しいタイプのお話。後半より前半の方が好き。物事が移り変わっていく様は見ていて読んでいて楽しいと思う。ただ、個人的には、コルキータに宿る呪いのその先を感じられると期待していた。

http://twitter.com/shirokusa/status/7744153551


ありがたし。
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by suikageiju | 2010-01-18 08:03 | 弊社発行物 | Trackback | Comments(0)
追加納品
 世田谷区は下北沢にある、律儀でハイブリッドな古書店古書ビビビさんに委託している西瓜鯨油社の『掌編集』の売れ行きが好評ということで、6冊を追加納品してきた。正午の茶沢通りを歩いていくと、開店直後のビビビの前では芸術家の卵っぽい感じの女の子2人が本棚をカメラに写していた。撮影の邪魔をしてはいけないと立ち止まると、鯨が両足の靴の裏を同時に地につけると同時に、林檎の頬っぺたをしてカメラを構えていた女子が鯨に「どうぞ」と道をあけてくれて、無事に鯨は店内に入ることができた。撮られるほどの古書ビビビさんの人気を喜ぶとともに、そんな人気古書店さんに本を置かせてもらっている自分の幸せをかみ締める25歳だった。ちなみにカメラ女子は納品後もまだ店の前にいた。寒いのによく粘る。
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by suikageiju | 2010-01-15 16:46 | 古書ビビビ | Trackback | Comments(0)
販促ポップ
 古書ビビビさんに置かせてもらっている本(横並びになっていた)の販売促進のためにアクリルポップを設置した。第九回文学フリマで使用した広告を大幅改定したものだ。「奇想、幻惑、言語的官能」という副題が結構気に入っている。ビログでも紹介された。だが、このアクリルポップの本当の仕掛けは裏にあるんだよ。
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by suikageiju | 2010-01-11 18:42 | 古書ビビビ | Trackback | Comments(0)