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同人誌のための地域通貨「同」
 この記事は同人誌のための地域通貨「同」、もしくは同人通貨「同」の構想をまとめたものだ。思い付きの簡単な痕跡である。
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【同人通貨「同」の理念】
・同人作家が失業などで日本円を獲得できなくなったときでも同人活動を続行できるようにする。
・同人作家同士の交流を促進する。
・同人誌の購買だけではない一般参加者の同人活動への支援を促進する。

【同人通貨「同」の使用法】
・同人誌のレビュー記事をブログやツイッターなどに書いてもらったら同人通貨「同」でお返しできる。
・サークルの宣伝記事をブログやツイッターなどに書いてもらったら同人通貨「同」でお返しできる。
・同人誌の原稿を書いてもらったら同人通貨「同」でお返しできる。
・同人通貨「同」を使って一般参加者やサークル参加者がサークルから同人誌を購入できる。
・同人通貨「同」を使ってサークルが即売会でのスペースを獲得できる。
・日本円で同人通貨「同」を購入することができる。
・同人通貨「同」を使ってサークルが印刷会社で同人誌を印刷できる。
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by suikageiju | 2010-03-28 18:49 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
西瓜糖文学賞
【西瓜糖文学賞標語】
権威も名声もない者による
権威も名声もない者のための
権威も名声もない文学賞


【審査員紹介】
西瓜糖文学賞審査員:牟礼鯨
「他人と触れあうために書いた物語、生きた証として遺したい物語、そんなあなたの物語」




西瓜糖文学賞審査員:中澤いづみ
「あなたのとっておきの嘘をつめこんだ話を、読みたいです」




【公募するもの】
空想世界を舞台にした400字詰め原稿用紙換算30枚以内の完結した物語。空想世界を舞台にしているならジャンルは問いません。一人につき何篇の応募でも構いません。また原稿用紙換算1枚程度の短いものでも構いません。短ければ短いほど助かります。ただ、売れる物語ではなく時代の風雪に耐えうる物語を求めています。

【当選作】
・もっとも優秀な作品には「西瓜糖文学賞」に選出されたという名誉が与えられます。
・とりあえず規定を満たしている応募作品は、2010年(平成22年)8月開催のコミケ78あるいはコミティア93、もしくはその両方において西瓜鯨油社から刊行予定の同人誌に掲載します。

【応募方法】
原稿の形式は物語であれば「.doc」か「.txt」で、牟礼鯨のメールアドレス「barkituro◎gmail.com」(◎は@)宛にメールで応募してください。件名は「西瓜糖文学賞応募」とし、本文に「筆名・普段活動しているサークル名(もしあれば)・サイト・ブログ(もしあれば)・自己紹介もしくは活動紹介文(自由)」を書いて、作品を添付して応募してください。

【応募締め切り】
応募締め切りは2010年6月30日です。

【その他】
作品が掲載された方には作品が掲載された同人誌を一冊づつ進呈致します。
質問、ご要望等は「barkituro◎gmail.com」(◎は@)までお願いします。

【反応や細かい規定など】
Togetter - まとめ「西瓜糖文学賞」
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by suikageiju | 2010-03-25 11:08 | 西瓜糖 | Trackback | Comments(0)
コみケッとスペシャル5 in 水戸
 西瓜鯨油社は「コみケッとスペシャル5 in 水戸」の初日だけに一般参加した。会場ではやはり文章系を中心にまわり、南洋文芸通信社さんやQuantum EDiterの踝祐吾さんにお会いした。
 さて西瓜鯨油社がコミケットスペシャルに参加していたという証拠写真をニュースサイトのGigazineさんに撮られてしまった。「晴天に恵まれた「コみケッとスペシャル5 in 水戸」に集ったコスプレイヤー」と題された記事の上から11枚目くらい、『涼宮ハルヒの憂鬱』の鶴屋さんのコスプレーヤーをされている方の写真を見て欲しい。右上に写っているのはコスプレ会場をうろうろしていた鯨の右足と弊社売り子である。最上級の靴を履いてくれば良かった。
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 コスプレ会場とは、撮る側が撮られる側へ観る側が観られる側へと自在に変化していく役割転換の場である。
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by suikageiju | 2010-03-22 09:28 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
薬指の標本

薬指の標本 SPECIAL EDITION [DVD]

ハピネット・ピクチャーズ


 フランス映画。原題はL'annulaire(薬指)。ちなみにフランス語で薬指を意味するannulaireは指輪anneauから来ているから、薬指はフランス風に言うと「指輪指」といったところか。原作は小川洋子の『薬指の標本』。原作の舞台は日本だが、映画では舞台をフランスに移している。
 レモネード工場で薬指の先を失った若い女イリスは、仕事を探しに港までやってきた。宿を借り、職を探してぶらぶらする彼女が見つけたのは標本作製の手伝いの仕事だった。そのラボはどこか奇妙で不可思議で、博物館のようで、それでいて何かを秘めているような無気味さを持っている。陰影のある表情の標本技術士も、常にイリスの背後で彼女を観察している。標本の依頼人は自分の記憶から遠ざけたい品物をラボに持ってきて標本にしてもらう。そうすることで記憶を標本に封印する。女性は標本技術士から靴をプレゼントされ、それを毎日履くように指示される。そしてだんだんと靴が足を浸食しはじめる。齢を重ねない標本技術士との地下室での密会、不思議な少年の視線、顔の火傷痕の標本を頼んだ少女の失踪、古い標本の収められた棚、色彩が薄れていく少女の写真、中国の宇宙哲学である麻雀。そしてイリスは薬指の標本を依頼する、靴を脱いで。
 鯨は今までの自分の作品で、固定されたものを流動させ固体を融解して液化させようとしてきた。この映画は時間や記憶や音楽など固体でないものの固化を主題にしている。年老うもの、変わり続けるもの、移ろい流れる人の心、そんなものをいつまでも止めて置きたくて。自由にはなりたくなくて。
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by suikageiju | 2010-03-20 17:50 | 感想 | Trackback | Comments(0)
夢の記述
 昔、見た夢を書き留めていたので、ここに発表する。日付はその夢を見て起きた朝の日付である。これは合理的な方法で、というのは人間はその眠りの最後に見た夢しか覚えていないからだ。

本文
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by suikageiju | 2010-03-20 10:27 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
サンフランシスコの天気
 曇り空の午後、イタリア人の肉屋がとても年老いた婦人に肉1听を売る。でもそんな年とった婦人が肉1听をいったい何に使うんだろうね。
 彼女はそんな大量の肉には見合わないお年寄りだった。たぶん彼女はその肉を蜂の巣箱へやるのだろう。500匹もの蜂が家で肉を待っていて、その蜂たちの体はきっと蜂蜜でべとべとだ。
「今日はどの肉にしますか」と肉屋は訊いた。
「いい挽肉があるんすよ。赤身の肉でね」
「知らないね」と彼女は言う。「挽肉はいらないね」
「ああ、赤身ですよ。俺が挽いたんだ。赤身をいっぱい使ってる」
「挽肉はよろしくないねえ」と彼女は言う。
「ああ」と肉屋は言う。「今日は挽肉にもってこいの日だよ。外を見てみな。曇ってる。雲の中には雨を含んでいる奴もいるだろうな。俺だったら挽肉だね」と彼は言う。
「いいや」と彼女は言った。「挽肉はいらないね。それに雨は降らないんじゃないかな。すぐにお日様が出てきて、晴れ渡るだろうね。だから肝臓を1听頂戴な」
肉屋は鼻白んだ。彼は老婆に肝臓なんて売りたくないんだ。老婆に肝臓を売るってことは何だか彼をしょげさせる。彼はもう彼女に何も言いたくなくなった。
 彼は嫌々ながらも、大きな赤い肉の塊から1听の肝臓を切り分けて、それを白い紙で包み、茶色の袋にいれた。それは不快な経験なんだ。
 彼はお金を受け取って、老婆にお釣りを返すと、家禽肉の棚に戻って、しょげた心を和らげる。
 船の帆のような骨を張って、老婆は通りに出た。彼女は勾配の急な丘のふもとまで、勝ち誇ったように肝臓を運んだよ。
 彼女は丘を登ったんだけれど、とても老いていたから、けっこうきつかった。疲れるから頂きにたどり着くまでに何度も小休止をとったよ。
 丘の頂きには老婆の家がある。曇り空を映す張り出し窓のある、のっぽなサンフランシスコ風の家だ。
 彼女は小さな秋の野原のような鞄をあけて、老いた林檎樹の落ち小枝のそばに家の鍵を見つける。
 彼女は扉をあけた。扉は愛しくて信頼できる友達だ。彼女は扉に会釈すると家に入り、長い廊下を抜けて、蜂の飛び交う部屋に入った。
 部屋のいたるところに蜂がいた。椅子の上に蜂。彼女の死んだ両親の写真の上に蜂。カーテンの上に蜂。1930年代の曲を流していた古ぼけたラヂオの上に蜂。櫛と刷毛の上に蜂。
 蜂たちは彼女のところに飛んできて、彼女のまわりを愛情たっぷりに飛びまわる。彼女は肝臓を取り出すとそれを曇った銀皿の上におく。すぐに皿の上は晴れ渡った。


The Weather in San Francisco, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-19 16:51 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
美しいオフィス
 最初にそこを通ったとき、それはデスクとタイプライターとファイル棚と鳴り響く電話のある普通のオフィスだった。6人のOLがそこにはいて、アメリカ中にいる他の幾百万のOLたちと見分けがつかなかったし、誰一人としてかわいくなかった。
 オフィスにいる男はみんな中年で彼らは、若い頃にかっこよかったり、青年時代に何か活発だったりというような様子を見せなかった。名前を覚えられないくらい彼らはよく似ていた。
 彼らはオフィスでしなくちゃいけないことをしていた。窓にも扉にもそのオフィスが何のオフィスなのかを説明するものはなかったし、そこの人が何をしているのか僕は知らなかった。たぶん別の土地にある大企業の支店だったのだろう。
 その人たちは自分が何をすべきかを知っていたから、僕は仕事の往復で一日2回その前を通過しながら、そのままにしておいた。
 1年くらいたってもそのオフィスはそのままだった。人は変わらなかったし、決まった量の仕事をしていた。それは宇宙の中にあるほんのちっぽけな空間にすぎなかった。
 ある日、道中にそのオフィスの前を通過すると、そこで働いていた平凡なOLはすべていなくなっていた、消滅した、まるで空気そのものが彼女たちに新しい職を与えたかのように。
 オフィスには彼女達の痕跡さえなく、彼女たちの後釜にはとってもかわいい6人のOLがいた。ブロンドちゃんやブルネットちゃんとかいろいろで、いろんなかわいい顔といい体をしていて、魅力的な女らしさがあって、体にぴったり合ったスーツを着ていた。
 親しみのある大きなおっぱいに気持ちのいい小さなおっぱい、そして誘惑されてしまうお尻たち。そのオフィスのなかで僕が見た全ての場所に、女の形で現れた心地よいものがあった。
 何があったんだ?他の女性はどこに行ったんだ?この女性たちはどこから来たんだ?彼女たちはサンフランシスコにまだ慣れていなさそうだ。これは誰のアイデアなんだ?これはフランケンシュタインの究極の意図なのか?ああ、僕たちは誤解していたんだ。
 1年たって、週5日そこの前を通り過ぎて夢中で窓の中を見て、これらのかわいらしい肉体がそこでしていることを何でも理解しようとした。
 僕は思う。誰が社長か、どの男が社長か、は知らないが、社長の妻が死んでこれは長年の単調さへの復讐なのだ、これでとんとんなのだ。あるいは夕刻にテレビを観るのに飽きただけだ。
 長いブロンドの女の子が電話に答えている。かわいいブルネットちゃんが何かをファイル棚にしまった。完璧な歯並びをしたチアリーダーっぽい娘は何かを消している。ちっちゃいけれどおっぱいの大きなミステリアスな女の子はタイプライターに紙を巻いている。完璧な口をして大きなお尻を持つ背の高い女の子は封筒に切手を捺している。
 美しいオフィス。


The Pretty Office, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-18 19:57 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
35ミリフィルム無限供給
 どうして彼が彼女と一緒にいるのか、他の人にはわからない。彼らには理解できないよ。彼はかっこ良くて、彼女は不細工だ。「彼は彼女の中に何を見ているんだ?」彼らは自身に尋ね、お互いに訊き合う。彼らはそれが料理ではないことを知っている、というのは彼女は料理が下手だからだ。彼女ができるたった一つの料理と云えば中途半端な出来のミートローフ。彼女はそれを毎週火曜日の晩に作るから、彼の水曜日のお昼はいつもミートローフのサンドウィッチだ。彼らは友だちが離婚しても一緒にいる。
 答えへの足がかりは、よくありがちなことだが、2人が愛を交わすベッドの上にある。彼女が映画館になって、彼はそこでポルノ映画を観るんだ。彼女の肉体は生きている映画館にある座席のやわらかなる並びで、それは彼が姦りたい女どもと一瞬の水銀映画のように交わるために用意された想像力の生温かいスクリーンである膣へと導く。だけど彼女はそんなことは知らない。
 彼女が知っていることは彼をとっても愛していることと彼がいつも悦ばせてくれていい気持ちにさせることだけ。彼の仕事が5時あがりなので、4時になると彼女は興奮してくるんだ。
 彼は彼女の内側で何百もの違う女どもと交わってきた。彼に触れ、彼のことを考えるだけの満足した映画館のようにそこに横たわって、彼女は彼の夢をかなえてくれる。
 「彼は彼女の中に何を見ているんだ?」人々は自身に尋ね、お互いに訊き合う。彼らは知るべきだよ。答えはとっても簡単。すべては彼の頭の中にある。


The Unlimited Supply of 35 Millimeter Film, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-18 19:51 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
複雑な銀行問題
 僕が銀行口座を持っているのは裏庭にお金を埋めるのに疲れたのとある事が起こったから。数年前、お金を埋めていたら、僕は人間の骸骨を掘り当ててしまったんだ。
 その骸骨は片手にショベルの残骸を持っていて、もう片方の手には半分融けた珈琲缶を持っていた。珈琲缶にはかつてお金だったと思われる錆粉のようなものでいっぱいだった。だから僕は銀行口座を作ったんだ。
 けれどどっちも時間がかからないわけじゃない。列に並んでいるといつも複雑な銀行問題を抱えた人々が僕の前にはいる。僕はそこに立って、経済漫画のようなアメリカの十字架刑に耐えなくちゃならない。
 たとえばこんなふうに。僕の前に3人いる。僕は現金に替える小額小切手を持っている。僕の手続きはたった1分で済む。この小切手はもう裏書されているし、手に持っているし、出納係の方を向いている。
 今、窓口にいるのは50歳の婦人だ。暑いのに長くて黒い外套を羽織っている。彼女は着心地がよさそうにしていて、彼女のほうからひどい臭いが漂っている。僕はたちまちにしてこれが複雑な銀行問題の最初の兆候だとわかった。
 それで彼女は外套のあげに手を伸ばし、冷蔵庫の影をとりだす、その冷蔵庫は酸っぱくなった牛乳や年代ものの人参でいっぱいだ。彼女はそれの影を普通口座に預けたいのだ。もう書類は書いてある。
 僕は銀行の天井を見上げ、それがシスティーナ礼拝堂であるかのようなふりをする。
 婦人は取っ組み合いの末におい出された。床には大量の血がこびりついた。彼女は守衛の耳を噛み切ったのだ。
 彼女の勇気は賞賛すべきだと思うよ。
 僕の小切手は10弗だ。
 次に並んでいる2人はじつは1人。彼らはシャム双生児で、それぞれ自分の通帳を持っている。
 彼らのうちの一人は彼の普通口座に82弗を預けようとして、他の一人は彼の普通口座を閉じようとしている。出納係が3574弗を数えて渡すと、彼はそれを彼の側にあるズボンのポケットに蔵った。
 こんなふうに時間が過ぎていく。僕は再び銀行の天井を見上げるけれどもうそれがシスティーナ礼拝堂であるかのようなふりはできない。僕の小切手は汗に濡れて、1929年に書かれたみたいになった。
 僕と出納係の間にいる最後の人はまったく個性のない見てくれだ。かろうじてそこにいるような没個性だ。
 彼は237枚の小切手を窓口に置いて、当座預金口座に預けようとしている。それらは併せて48万9000弗。彼にはまだ普通口座に預けようとしている611枚の小切手がある。それらはしめて175万4961弗。
 紙吹雪のように彼の小切手が窓口をおおいつくした。出納係は長距離走者のように手続きを始めるが、僕は裏庭の骸骨は結局のところ正しい決断を下したんだな、なんて思いながらそこに立っている。


Complicated Banking Problems, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-18 19:42 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
アーネスト・へミングウェイのタイピスト
 なんだか宗教音楽だな。僕の友人がニューヨークから帰ってきて、そこでアーネスト・ヘミングウェイのタイピストに清書してもらったんだってさ。
 奴はできた作家だからそこで最高のタイピストに会ったんだけど、それが何とアーネスト・ヘミングウェイの清書をしたときたもんだ。びっくりしちゃうよね、沈黙で肺が大理石になっちゃう。
 アーネスト・ヘミングウェイのタイピストだってさ!
 彼女は若い作家たちの夢を、ハープシコードのような手と完璧なまでに強烈な眼差し、それらに続く深遠なタイプ音でかなえてくれるんだ。
 奴は彼女に時給15弗を払ったんだって。配管工や電気工が貰うのより多いんだぜ。
 日給120弗!タイピストに!
 奴は言ってたな、彼女はなんでもやってくれる、って。原稿を手渡すとなんだか奇跡みたいに綴りを直してくれるし、涙が零れるくらいに美しい句読点を打ってくれるし、ギリシャ神殿みたいな段落に分けてくれるし、文章を終わらせてもくれるんだぜ、って。
 彼女はアーネスト・ヘミングウェイの
 彼女はアーネスト・ヘミングウェイのタイピスト。


Ernest Hemingway's Typist, 作:リチャード・ブローティガン, 訳:牟礼鯨
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by suikageiju | 2010-03-18 19:38 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)