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依頼型店頭新ポップ
 古書ビビビさんにおく店頭ポップを鳥久保咲人さんに依頼してつくってもらった。牟礼鯨は果報者である。鳥久保女史は赤と黒の配色が鮮やかな、目立つ販促ポップを作ってきてくれた。遠くからでもよく目立つ。これで西瓜鯨油社と鳥久保さんの文章系同人Lumiereの名が下北沢全体、いや東京全体に広まればいい。是非、下北沢で見よ!
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by suikageiju | 2010-07-25 17:43 | 古書ビビビ | Trackback | Comments(0)
COMITIA93当選
 8月29日に東京ビッグサイト西2ホールで開催されるCOMITIA93に当選した。応募数が2450ほどで当選数は2000強とのこと。注目の西瓜鯨油社スペースNo.は
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コミティアについては初参加のCOMITIA89から連続5回の参加、そしてコミティア参加一周年となる。ちょうどぐるりと一回廻った感じだ。夏コミに引き続いて『西瓜糖』を頒布する予定の他、何を考えているかは自分でもわからない。新刊というよりも無料配布かもしれない。
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by suikageiju | 2010-07-20 18:34 | COMITIA | Trackback | Comments(0)
ツイッターアイドル
 7月11日池袋駅東口、灼熱の副都心、凍る黄銅の髪と冷たい大理石の皮膚をした娘が鯨の前に現れた。娘は鯨を見つけると痴漢に捻りつぶされそうなくらい細い体を折り曲げて挨拶をする。
「bonjours, monsieur.」
「bonjours, mademoiselle.」
 娘は、鯨がtwitterでひっかけたツイッターアイドルことツイドルのFである。出会った瞬間に鯨は悟る、「ああ、この娘は自分の理想の恋愛や理想の男性像を恋人に押し付けるタイプの、非情熱型の女である」と。そして思う、「やけにのっぺりとしたお顔の女の子だな」と。鯨はFに案内されるがまま、池袋パルコ6階のカフェアドレスに入っていった。
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小学生時代
 中国地方のとある県で、金融機関勤務の父と地方公務員の母との間に待望の女の子として、Fは産まれた。もちろん「待望の」という形容詞は両親の結婚から7年たってFが産まれたことからの鯨の勝手な憶測で、本当のところはどうだか分からない。小学生時代のFはぼんやりとした女の子で、3年生から4年生にかけての記憶を喪失した。というのは4年生から卒業するまで男子から受けた壮絶なイジメの記憶がその直前の数年の記憶を吹き飛ばしたからだ。たぶんそれは男児特有の「好き」の裏返しとしてのイジメだったと思うけれど、その経験がFを「自分はセンチメンタルだ」と思い込むような女の子にさせてしまった。窓辺から飛び降りそうな女の子の誕生である。

中学生時代
 小学校時代のイジメは中学に上がり男の子たちがオナニーに夢中になると自然と已んだ。イジメによる快楽だけを身体に刻み付けて、Fは吹奏楽部で金管楽器を吹く学年2位の優等生という地位を獲得した。スチュワーデスになることを夢見、『指輪物語』を読む少女は、誰も知らないうちにその小さな動揺しやすい心の混迷をさらに深刻化させていった。中学生時代のFに一度だけ浮ついた話がある。それはクラスでいじめられていた男の子に校舎の2階から「F、好きだー!」と叫ばれただけの話である。たぶん、それは罰ゲームであったのだろう。たとえ罰ゲームであったとしても、それはFにとって大事な中学時代の思い出だった。

高校生時代
 優等生のFは県内随一の進学校に進学した。城跡に建つ高校で彼女はまた金管楽器吹きとしての名声を轟かした。英語が得意で、東京での生活を夢見る浮ついた女子高生Fは高校時代に3人の男と付き合う。1人目は中学時代に同じ塾に通っていたMくんで、彼とは手も繋がずに別れた。2人目はチャラいJくんでなかなかヤらせないFに嫌気が差し簡単にヤらせてくれる女に鞍替えした。3人目は体育館でトロンボーンを吹いていたFが体育館で見初めたバスケ部のSくんで、2人の関係は高校時代の唯一の恋愛らしい恋愛と言える。SくんはFの家におしかけたこともある。しかしFは絶対に一線を越えなかった。彼女の脳裏には小学校時代のイジメの記憶が地元の砂のようにこびりついていた。「地元の砂まみれな男には私の身体は触らせない。東京の男に抱かれたい、東京の男にはじめてを奪われたい」そんな思いを秘める夢見がちで屈曲した女の子、それがFなのだ。だからこそ、その屈折がゆえに、彼女は男たちを惹き寄せる。彼女のような女の子は「この子を理解できるのは俺だけ」と信じ込む気持ち悪い鬱屈男に事欠かない。

大学生時代
 FはO女子大学に合格し、憧れの東京で寮生活をはじめた。バスケ部のSもFを追いかけてT大学を受けるも受験に失敗、御茶ノ水のS台で予備校生活をはじめる。地元で愛を紡いだはずの2人は東京での生活をはじめた。しかし東京でのSとFは茗荷谷から池袋までの区間を一緒に帰るだけの仲に過ぎなかった。ここは、2人が純真でいられた地元ではない。性が氾濫する、女子中学生がセックスをする、大東京なのだ。東京に憧れる少女Fは、大学生でもなんでもない浪人生Sに飽きてしまった。砂丘は既に朽ちぬ。Fの気持ちを勘づいたSは「絶対にT大に受かる」とだけ言い残しFと別れた。ちなみにSは一浪の末、T工業大学に入学する。
 そしてFはT大の地文研天文部の仲間であるT大生Gと付き合いはじめる。GはFにとって特に好みの男ではなかったが、夏のうちに2人は大塚で一線を越えていた。しかしGは厳格な医療関係者の父に育てられた男、私立S中高の出身で世間を知らない割りに「Fは俺がいないと何もできない」と信じて疑わない、思い込みの激しい男であった。ときにはFの髪をつかみdating violenceを仕出かすまでになる。Fの、鬱屈した男を惹き寄せる能力は東京でも如何なく発揮されたのだ。しかしFはGを教育し、理想の男性像を当て嵌めさせ、理想の恋愛像を押し込めようとする。それに順応されて大学2年生のときのGは丸くなり、FとGは合宿でもいつでもどこでも互いを求め合った。しかし2人の関係は3年生で一旦途絶える。所詮GはFが「理想の恋愛」ゲームを演じるのに相応しい相手ではなかった。天文部部長に告白されたFは「浮気するのは嫌だから」とGを振る。たとえ周囲が苦しんでも、たとえ誰かが心に傷を負っても、自分だけは「いい娘」でいたい、恋愛ゲームのルールに背きたくない。Fはそんな狡猾な、蛇蝎のような女の子なのだ。そして、Fは部長に好きなようにされる。もちろん部長は「理想の男性」ではなかった。Fは部長を捨て、就職活動をはじめ、就活で出会った男と付き合う。でも男はチキンで最後まではいかず(「俺そういうの知らないから教えてくれよ」)、Fはその男を見限り、Fと復縁した。「理想の恋愛」を求める自分に「肉体的欲求」が打ち克ったのだ。こうして元の鞘におさまったF。でも、Fには悩みがある。自分の就職が決まったのに、まだGの就職先が決まらないのだ。Fが寮を出て、東京で一人暮らしをはじめるとGは確実にFの部屋に転がり込み、ヒモとなるだろう。GはFに『ゼロから学ぶ超ひも理論』を貸していて、既に調教済みである。

理想の男性像としての父親
 Fにとっての理想の男性とは父親であり、父親でしかない。180センチ超の高身長、地元の金融機関の管理職、小遣い制をとっていない自立した男、野球・水泳・マラソン・登山・テニス・ゴルフ・スキーなどなんでもこなす万能選手、背中を見ると若者に見える父親、母親と学生結婚をしたかっこよさ、それらの要素すべてを「父親に属する」という理由だけで父親を崇拝する理由にしている。きっとこれからもFはそんな父親像を、「理想の男性像」をGとGのあとに続く恋人たちに押し付けていくのだろう。対談が終わり、Fはカフェ・アドレスを出て行く。池袋パルコの少女たちと比べても遜色のないファッションのFの背中を見ながら、鯨は考える。総じて言えば、Fは田舎娘なのだ。単一化された価値観しか育たない田舎から東京にやってきて、すこし背伸びをして頭だけを東京につっこんでいる女の子なのだ。Fから感じた不可解さと垢抜けなさの原因をそんな単純な構図に押し込めて、鯨は席から立ち上がる。情熱をまったく感じさせないFの茶髪の輝きを瞼の裏でちらつかせながら、鯨は池袋の雑踏のなかに消えた。

※ Fは既婚女性であるため、2013年9月13日に人物を特定できないように修正しました。
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by suikageiju | 2010-07-12 07:00 | 雑記 | Trackback | Comments(0)